ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 100ページ

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ラグレスは、目を疑った。

目の前で起こる、アグリアと

シュリの攻防が、目で追いきれて

いないのだ。

大量の出血のせいかとも思っ

たが、それだけではない。

二人の動きが速すぎるのだ。

ただ、自分の周りの壁だけが、

アグリアの斬撃の余波で削られ

ていることからみて、シュリが

自分を守りながら戦っているこ

とがわかる。

(この私が、怪我してるとはいえ、

足手まといになるとはな・・・)

ラグレスは、なんとか立ち上

がると、残る右手で静かに剣を

抜き放った。


「さすがは四天[ばけもの]の一

人だ、俺の斬風陣[ざんぷうじ

ん]をことごとく受け流すとは

な!」

アグリアが攻撃の手を休める

ことなく言い放つ。

しかし、当のシュリは、小太

刀と手甲を使い、アグリアの攻

撃を受け流しながらも、焦りを

覚えていた。

(ばかな!私の骨砕流し[こつさ

いながし]は、確実に骨を破壊

しているはず・・・)

攻撃を受け流すと同時に骨を

破壊する、骨砕流しという技を

絶えず使っていたシュリは、衰

えるどころか、逆に鋭さを増し

ていくアグリアの斬撃に困惑を

隠せない。

しかも、受け流してはいるも

のの、アグリアの一撃一撃が重

く、逆にシュリの骨をきしませ

ている。

ラグレスを守りながらでは、

そう長く持ちこたえられないだ

ろう。

(・・・レミア)

シュリは、焦る気持ちをなん

とか抑えこみ、この戦いの鍵を

握る同志の名を心の中でつぶや

いた。

そのレミアはというと、レー

ラを救うため、一度集中を解い

てしまっていた。

この獣のような大男は、思っ

たより厄介で、肌の露出部分は

多いものの、全身を覆う剛毛と、

鋼のような筋肉がレーラの斬撃

をことごとく弾いてしまうのだ。

レミアは、仕方なく集中を解

くと、別の魔法を唱えた。

「踊る短剣空間[ダンシングダガ

ーフィールド]」

はじく度に勢いを増して襲い

かかる複数の魔法の短剣が浮遊

する空間に男を閉じ込める。

これで、しばらく時間を稼げる

だろう。

「レーラ、しばらく休んでなさ

い」

肩で息をし、片膝をついてい

るレーラに、レミアは優しく声

をかける。

「はぁ、はぁ、でも、お父様が、

はぁ、はぁ」

「今のあなたが行っても足手ま

といになるだけよ」

今度は、少しきつくレーラに

言い聞かせると、レミアは再び

集中し、魔力の触手をゆっくり

と伸ばしていった。


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