ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 104ページ
「はぁっ!」
「甘い!」
″ガキィン!″
気合いを込め、振り下ろした
大剣は、ヴィラスに剣で受けと
められたが、これは計算通りだ
った。
「地円縛[アースサークルバイン
ド]!」
「むっ?」
クラテスは、大剣を円を描く
ように動かし、ヴィラスの剣を
絡め、体が開くように地面へ抑
えつけて動きを止める。
ヴィラスは、力任せに剣を動
かそうとしたが、それより素早
く、クラテスは体を回転させ、
ヴィラスの開いた懐に後向きに
滑り込むと、自分の左肩に長剣
をつきたてた。
″ザシュ!″
「なに!?」
飛び散った血が、ちょうど、
ヴィラスの目元にかかり視力を
奪う。
「がぁ!くそっ!」
ヴィラスは、クラテスの気配
が驚くべき速さで遠ざかり、そ
して、ふっと消えたのを感じた。
急ぎ迷宮を解除するよう、マ
カラトに思念を送ってみるが返
答はない。
「・・・まさか逃げるとはな、
やはり貴様は、不純物[まがい
もの]でしかない」
ヴィラスは、そう呟きながら、
目に入った血を、自ら涙腺を刺
激して流しだすと、黒い鱗が大
きくひび割れた、自分の左腕に
憎々しげな視線を向けた。
「このままでは済まさん!」
~~~~~~~~~~~~~~
(なにが起きたんだ??)
レオは、自分の思考が停止し
ているのかと思うほど、頭の中
が真っ白になっていた。
「くはっ!」
グレニア将軍の、やや後ろ両
脇から胸にかけて突剣[レイピ
ア]と長剣がつきささっている。
さかのぼること数分前、騎士
団長たちは、数で勝る敵兵に、
次第に押され始めていた。
それを打開するため、グレニ
ア将軍が剣風壁[スラッシュウ
ォール]を放つため、一歩前に
踏み出す。
「くらえぃ!剣風[スラッシュ]
ぐっ!?」
グレニア将軍が大剣を振り上
げたその時、後ろ両脇から刺し
つらぬかれたのだ。
「お・・うおぉぉ!」
剣を素早く引き抜き、敵兵側
に跳んだ二人の内の一人を、グ
レニア将軍の最後の力を振り絞
った一撃がとらえた。
その人物は、突剣[レイピア]
でなんとか受けとめたものの、
グレニア将軍渾身の一撃の威力は
すさまじく、魔力のこもった突剣
をいともたやすく砕き、肩から胸
にかけて大きく切り裂き、重傷を
負わせた。
「坊っちゃま!」
もう片方の人物が、老人とは
思えない動きで重傷を負わされ
た人物を支える。
誰もが予想だにしなかった、
グレニア将軍の両脇にいた二人、
天馬騎士団[ペガサスナイツ]を
束ねる若き騎士団長ホーネスと、
それにつき従う老傑、副騎士団
長であるバラッドの、突然の裏
切りであった。
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