ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 227ページ

「もう!なんなのよぉ!りんご

ちゃんくれないと噛むぞぉ!?」

妹のマリが、怒りを露に近づ

いてくる。

「あ、あとであげるわよ!今は、

これで勘弁してちょうだい!」

葵は、急いで懐から、非常用

に持ってきていた、飴玉を一つ、

マリに手渡した。

「むぅぅ、あめちゃんかぁ・・

・嘘だったら、噛みついてやる

んだから!」

マリは、頬を膨らませながら、

飴玉を口に入れる。

「あれ?私には?」

姉のユリが、両手を腰に当て

て胸を張り、鋭い視線を向けて

きた。

「あ、あるわよ!」

葵は、ユリにも飴玉を手渡す

と、今まで感じていた重圧から

解放された。

二人を喚び出す時に、危険を

感知する能力を遮断したはずな

のに、立っているのがやっとな

ぐらいの重圧が、葵に襲いかかっ

てきていたのだ。

味方のはずの二人から感じる

危険が一番大きいとか、まった

くシャレにならない。

この二人から感じる危険は、

まるで、あの、黒いドレスを着

た貴婦人を思い出させた。

「ふぅぅ、あいつ空間を操るか

ら、なんとかしてちょうだい!」

大きく深呼吸して、やっと落

ち着いた葵は、ロルゴを指差し、

二人に指示を出す。

「ふん!魔力吸収《マジックア

ブソーブ》!」

鼻を鳴らした姉のユリが、詠

唱もなしに、黒い球体を解き放

つ。

″ズバッ!″

すると、キースの剣撃が、ロ

ルゴの体に傷を刻む。

「ぐっ!バカな!魔力を!?お

のれ!」

ロルゴが懐から短剣を取り出

す。

「あっ!あっ!マリの出番なく

なっちゃぅ!」

マリが慌てたようにじたばた

した後、ちょっと邪魔!と、キ

ースとグレニアに手をかざすと、

二人が葵の後ろへと瞬間移動し

た。

「へっへー!マリ、強いんだか

らねぇ~!ビリビリ~♪サンダ

ー!」

マリが人差し指を立て、軽く

お尻を振りながら、その指を空

に向け、交互に上下したあと、

身体を斜めに向け、若干片足の

かかとを上げた状態で両指を前

につき出すと、空から大きな稲

妻が落雷し、ロルゴと骨竜を包

みこむと、一瞬で消滅させてし

まった。

「よわっ!」

ユリが目を丸くする。

″ドッ!″

葵は、立っていられないぐら

いの脱力感に襲われ膝をついた。


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