ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 10ページ

「ここがどこかは俺にもわから

ない、理由は、みんなに話した

いから、みんなを起こしてくれ」

「・・・わかりました」

珍しく真顔の涼に、ただなら

ぬものを感じ、凱は、急いで

みんなを起こし始める。

案の定、自分たちに何が起き

たのか理解できない優と裕也が

パニックを起こしている。

他の者も少なからず動揺して

るのか、蒼い顔をしていた。

しかし、みんなが落ち着くの

を待ってる時間はないとばかり

に、涼が話し始める。

「みんな落ち着いて聞いてくれ、

ここがどこなのかは、俺にもわ

からない。ただ、数日前に、こ

れとまったく同じ夢をみた。あ

まりに鮮明に憶えていたから気

になってはいたけど、まさか現

実になるとは・・・。このまま

夢のとおりになるとしたら、こ

こにいるのは危険なんだ」

「危険?その夢では、このあ

と私たちは、どうなったの

ですか?」

なんとか平静を保ちながら、

沙織が尋ねる。

「・・・全員殺される」

『!!』

涼が、少し逡巡した後に発した

言葉は、誰も予想しなかったも

のだった。

「こ、殺される?し、死ぬって

いうんですか?ばかばかしい!

所詮夢じゃないですか!」

「・・・確かに加賀の言うとお

り、ただの夢だ。だが、夢のと

おりになってしまったら取り返

しがつかない、用心するに越し

たことはないだろう?」

「そ、それはそうかもしれない

けど・・・」

裕也は、涼に優しく諭されても、

まだ納得できないようだ。

「あそこに塔らしきものがみえ

るだろう?建物があるってこと

は、誰かいる可能性が高い。い

なかったとしても、何かわかる

かもしれない」

涼が森を左手に、左に曲がり

ながら延びる街道の先を指差し

た。

確かに白い塔のような建物が

木々の隙間から、かすかに見え

る。

「みんなに、これを渡しておく。

近くにきれいな川があったから

飲み水を汲んでおいた」

涼が一人一人に水筒を手渡す。

-‐紐を腰に巻きつけて固定す

る小さなものだ‐-

「今は時間が惜しい。体中痛い

だろうけど、できるだけ急いで

塔へ向かおう!」

「ちょっと待ってよー、何がな

んだかわからないんだよ?ちゃ

んと説明してよー、殺されるっ

て、いったい誰に?何でなの?」

優がパニック気味にくってか

かる。

「そ、そうですよ!ちゃんと説

明してくれてもいいんじゃない

ですか?」

裕也がそれに続く。

「・・・時間がないんだ」

涼が少し焦りをにじませなが

ら答えたその時、凱は、少し離

れた木の陰に潜んでいる存在に

気付いた。


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