ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 193ページ

「やりました、お師様・・・じ

いさま」

アイリの脳裏に様々な思い出

が駆け巡る。

アイリが、まだ小さい頃に、

里の任務で命を落とした両親に

代わり、本当の孫のように可愛

がり、時には厳しく、そして何

より優しく育ててくれたのが、

武術の師でもある、ガンクウであ

った。

しかし、そのガンクウも、ア

イリが15歳になり同行した任務

で、偶然出会ってしまった吸血

鬼[ヴァンパイア]の群れに、人

質にとられた自分を助けるため、

一切抵抗することなく、なぶら

れ、もて遊ばれ、喰われてしま

った。

アイリは、何もできず、それ

を見ていることしかできなかっ

たのだ。

その吸血鬼の一団は、報告後

に急遽編成された討伐隊によっ

て退治されたということだが、

一体だけ、討伐隊でも歯が立た

ず、逃げられたやつがいたらし

い。

いまもそいつは、どこかで、

のうのうと暮らしているのだろ

う。

ガンクウには、任務失敗とい

う不名誉なレッテルが貼られ、

葬儀をすることさえ許されなか

った。

吸血鬼たちの気まぐれで生き

長らえたアイリだったが、

許せなかった!

師を侮辱する里の連中も!

卑劣な化け物である吸血鬼も!

そして何より、無力な自分が・

・・。

アイリは、自ら、顔に一生消

えない傷を刻みつけた。

痛みを!憎しみを!忘れるこ

とがないように!

それからは、がむしゃらに修

業に明け暮れ、里でも五本の指

に入るほどの実力を手に入れた。

その後、手がかりもないまま、

逃げた吸血鬼を捜し出せるはず

もなく、この世から吸血鬼を滅

することだけを生き甲斐にして

きたアイリの怒りは、吸血鬼の

始祖ノスフェラトゥに向けられ

ることになる。

そんな時、同じく吸血鬼に恨

みを持つ里の者から、神をも封

じると言われる、里に封印され

た禁術の存在を知らされ、ノス

フェラトゥを倒すために必要だ

と、その奪取を持ちかけられた

のだ。

アイリに迷いはなかった。

同じ思いの同志数人と、禁術

を手に入れる計画を実行したア

イリだったが、記された巻き物

に目を通したところで、いち早

く察知したシュリが現れ、追わ

れる身となってしまう。

追っ手を倒しながら逃げ続け

たアイリたちの前に、最後の追

っ手であるシュリが立ちはだか

った。

同い年ながら、天才と謳われ

たシュリの強さは、想像以上で、

一斉に襲いかかるも、仲間たち

は倒され、巻き物は奪い返され

てしまう。

そして、仲間たちの捨て身の

犠牲で消耗し、傷ついたシュリ

と、アイリの相討ちという形で

決着がついた。

シュリは、クーラの泉に落ち、

死んだと思っていたが、聖ミリ

アの姫に命を救われていたこと

を最近になって知った。

自分も、ザハン女王であるル

ミナに偶然発見されなければ、

命はなかっただろう。

一度、目を通しただけの術を、

なんとか形にできたのは、執念

以外のなにものでもない。

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