ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 190ページ
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″ヒュン!ガイーン!″
(なっ!?)
「あははっ!なにそれ!?ウケ
るぅ~!」
凱は、殺されるわけにはいか
ないと、エルフの少女を気絶さ
せるため、槍の柄で殴りつけた
のだが、彼女を覆っている魔力
に弾かれてしまったのだ。
(生半可な攻撃では、届かない
ということか)
まだ幼い?少女を本気で傷つ
けることには抵抗があるが、殺
されては元も子もない。
凱は、比較的、瘴気が薄い場
所に移動すると、息を整える。
「な~に?鬼ごっこは、お終い
?」
エルフの少女が宙に浮いた状
態で、凱の目の前までやってき
た・・・と同時に、凱は、渾身
の力を込めた攻撃を繰りだした。
「旋回槍撃[スパイラルランス]!」
体を回転させた力を槍に乗せ、
さらに槍自体を回転させること
で、突きの威力を大幅にあげた、
現時点で凱のだせる最大の攻撃
である。
エルフの少女に、その攻撃が
届くかと思ったその時、彼女が
人差し指を立て、そこに息を吹
き掛ける仕草をした。
すると、凱の攻撃が、その槍
ごと手元から消える。
「なに!?ぐっ!?」
驚いた凱の胸に、自分の槍が
突き刺さっていた。
まるで、自分の攻撃をそのま
ま受けたかのように、凱の体は
吹き飛び、近くの大木へと打ち
付けられて止まった。
「ば、ばか・・な・・・」
何が起こったのか理解できな
いまま、自分の意識が遠退いて
いくのを感じる。
「ぷっ!だっさ~い!驚いた!?
驚いちゃったの!?すごいでし
ょ!?あたしの、裏切りの吐息[ト
リーチリーブレス]!1日に一
回しか使えないのが残念なんだ
けど、好きなんだよね~この技!
・・・って、ちょっと!聞いて
るの!?」
少女は、地面に降り立つと、
足音が聞こえるように、わざわ
ざ歩きながら凱に近づいていく。
とことん、追い詰めていくの
が好きなのだ。
凱は、遠退く意識の片隅で、
その足音を死神の呼び声かのよ
うに感じながら聞いていた。
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″ヒュン!ズバッ!シュバッ!″
「なにっ?」
シェザリーは、軽く振るった
剣で、向かってくる敵兵五人を
仕留めた・・・はずだった。
しかし、斬れたのは二人、し
かも、かろうじて急所をはずし
ていたらしく、近くの仲間が回
復魔法で傷をふさいでいる。
ここは、ザハンと、元聖ミリ
ア教国であるアグリア帝国との
国境付近、国境を越えて攻め入
ってきたアグリア帝国の兵たち
を、団長であるシェザリーを筆
頭とする、黒騎士団[ブラック
ナイツ]が迎え討っていた。
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