ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 98ページ


クラテスは、薄暗い迷路のよ

うに入り組んだ通路を駆けてい

た。

レーラのもとへと向かったク

ラテスの眼前に、突如、青く光

る透明な壁が出現し、それを打

ち破ろうと不用意に触れてしま

い、ここに跳ばされてしまった

のだ。

(らしくない・・・焦っていた

のか?)

クラテスは、息一つ乱さず駆

けながら自問する。

確かに焦っていたのかもしれ

ない、彼女の傍には、オルファ

とレミアがいたというのに。

レーラを守らなければという

思いが先走り、冷静な判断を欠

くとは、まったくもって自分ら

しくない。

レーラと出会った時には半信

半疑だったことが、レミアの言

動から確信を得たせいだろうか?

いや、アグリアがラグレスに

斬りかかった時に感じた嫌な予

感のせいだ。

(あの力は・・・!声?)

クラテスは、思考を中断する

と、かすかに聞こえてきた声の

方へと全力疾走した。

(・・・二人?一人は生気がど

んどん失われていく)

気配をたどり、生命力を感じ

る、クラテスに備わった力の一

つだ。

クラテスは、視界に二人をと

らえ足を止めると、一瞬で状況

を把握する。

剣で刺し貫かれた後ろ姿は、

よく知っている人物だった。

「ユロフ様!」

クラテスは、まだ顔が見えな

い相手に一足で近付き、腕を斬

り落とした。

・・・いや、そう思った。

それぐらい自信がある本気の

一撃だったのだ。

しかし、右手で抜き打ちした

長剣による斬り上げは、相手の

腕で止まっていた。

″ガキィィーン!!ィーン!ィ

ーン!″

辺りには金属を打ち鳴らした

かような甲高い音の余韻が響き

わたっている。

「!?」

クラテスは驚きつつも、相手

の反撃に備え跳びすさるが、相

手からの反撃はなかった。

「やっと会えたな、不純物[まが

いもの]」

「!あなたは!黒竜のヴィラス

!?」

そこで、ようやく、クラテスは、

男の正体に気付く。

「ほう、私を知っているとはな、

ん?何をそんなに驚いている?

目覚め[ウェイクアップ]を見る

のが初めてとか言うのではある

まいな?」

男は、黒く尖った鱗に覆われ

た腕を見せながら問い掛ける。

「ぐはっ!ごほっ!ごほっ!ク

ラ・・テス逃げ・・るのじゃ」

男が動いたことで意識を取り

戻したのだろう、ユロフが苦し

げにうめく。

「ユロフ様、今、お助けします

!地裂双撃[ダブルアースクラ

ッシュ]!」

クラテスは、空中に飛び上が

ると、左手で背中の大剣を引き

抜き、右手に持った長剣と交差

させるように、男に向かい振り

下ろした。

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