ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 171ページ

「事実です、結界で外にださな

いようにして捜索中ですが、み

つけられずにいるのです」

アヌビスは、目を閉じて淡々

と言葉をつむいだ。

「ばかな!穴が開いてしまった

というのか!?なぜもっと早く

言わない!?」

セクメトの怒りは、もうすで

にピークに達しているようだ。

「すまない、封を施すのに必死

だったのだ、それに、確信があ

ったわけではないし、余計な混

乱を招きたくなかった」

「ふざけるな!ホルスたちが姿

を消して、もう一週間だぞ!?

そんなことを言ってる場合か!

・・・まさか!?」

アヌビスの言葉に、さらに怒

りをぶちまけ、今にもつかみか

かるかと思えたセクメトであっ

たが、ふと思い至ったというよ

うに、ヴァーリンと視線を交わ

す。

「消えたホルスたちがそうだと?」

それを受けたヴァーリンがア

ヌビスに尋ねる。

「・・・おそらく」

アヌビスは、ゆっくりとうな

づいた。

「ふむぅ、やつらの中には、姿

形を模倣できる奴が確かにいた

という話だが、まったく気づか

んかったわい、で?これからど

うするつもりじゃ?」

ヴァーリンが再びヒゲをなで

ながらアヌビスに尋ねる。

「はい、セクメト殿とガネーシ

ャ殿には、クルン内の捜索を、

ヴァーリン殿は、私と共に封の

強化をお願いしたい」

「ふん!いいだろう」

「うむ、了解した」

アヌビスが頭を下げると、セ

クメトは、まだ納得してはいな

いぞと言うようにアヌビスをに

らみながらも、承諾の意を示し、

ヴァーリンも、ヒゲをなでなが

らうなづく。

ただ、ガネーシャだけは、無

言で席を立っただけであった。

彼に関しては、商売以外で口

を開いたのを見たことはないの

で誰も気にしない。

首を横に振らないという事は、

わかったということなのだろう。

クルンの長たちは、各々の役

割を果たすため、部屋をあとに

したのだった。

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″ビシュッ!″

レオの腕が裂け、血が飛び散

る。

プラントビーストは、予想以

上に素早く、狼形態[ウルフフ

ォーム]となったレオでさえ、

動きをとらえられずにいた。

その上、体は、木の枝やツタ

がからまってできているため、

すぐバラバラにすることができ、

レオの攻撃や優の弓矢をことご

とくかわしてしまうのだ。

(くそっ!)

攻撃が当たらず、攻撃した自

分だけが傷ついていく状況に、

レオは、苛立ちを隠せない。

「う~、動きが止められればな

ぁ~」

無駄だと知りつつも、優は、

先ほどから木の陰に隠れて、戦

闘を見守るラクーンへと視線を

向ける。

すると、意外にも、ラクーン

は、優の隣まで出てきて、得意そ

うに胸を張った。

『わちなら何とかできるぞ!た

だ、契約が必要ぞ!そちは、資

格がないから無理ぞ!』

「・・・」

優は、少しでも期待してしま

った自分を恥じる。

だが、その時、優とラクーン

の隣に突然、一人の男が姿を現

した。

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