ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 99ページ

~~~~~~~~~~~~~~

″ヒュゴォー!″

鎖鎌が恐るべき勢いで自分の

もとへ飛んでくる。

優には、ゆっくりとしたスピ

ードで見えていた。

しかし、体は反応しきれてい

ないのか、全く動かない。

仲間たちも誰一人として反応

できていないようだ。

きっとこれは、一瞬のできご

となのだと理解する。

(これが走馬灯ってやつなんだ

・・・私、死ぬんだ・・・嫌!

死にたくない!)

優は、心で必死に抵抗するも、

自分ではどうにもできないこと

もわかっていた。

「瞬速の鞭[モーメントウィップ

]!」

力強い女性の声と共に、優の

時間が流れを取り戻す。

見えないなにかが、優に迫る

鎖鎌の鎖を打ち、鎌の軌道を変

えたようだ。

それが鞭だとわかるまでに数

秒を要するほど、速い一撃だっ

た。

「なにぃ!?」

男は、驚きの声をあげる。

それと同時に騎士団長、副騎

士団長たちが、優たちを守るよ

うに円状に陣形を組んだ。

「大丈夫かい?嬢ちゃん」

「ミリー・・さん」

優は、声をかけてきた女性を

半泣きでみつめる。

彼女は、キリッとした眉と目

が特徴的な整った顔だちをして

いるが、顔の右半分に大きな火

傷の跡があり、それが痛々しい。

しかし、本人は全く気にして

いないどころか、それを見せ付

けるかのように真っ赤な長い髪

を左側に寄せて下ろしている。

天使騎士団[エンジェルナイ

ツ]の副騎士団長を努める女傑

で、普段は騎士として剣を振る

っているが、傭兵時代から使っ

ている鞭の方が得意らしく、常

に腰にさげて持ち歩いている。

気さくで、飾らない性格で、

上司、つまり騎士団長であるク

ラテスを呼び捨てにするのは彼

女だけだろう。

優たちとも、すぐに打ち解け、

たまに会った時は、傭兵時代の

話などを聞かせてくれていた。

彼女の鞭でなければ、間に合

わなかっただろう。

自分は、まだ運に見放されて

はいないと、優は抜けそうな腰

を、両足に力をいれてこらえた。

(あの時とは・・違うんだから

!)

「おまえたちは下がっていろ!」

グレニア将軍の大きな声が響

く。

「!くっ!」

いくら騎士団長たちといえど

も、自分たちを守りながらとい

う、動きが制限された中で、こ

の大勢の手練れを相手に持ちこ

たえられるのだろうか?

グレニア将軍の声に渋々従い

ながらも、凱は不安を覚えずに

はいられなかった。

敵は、こちらを囲むようにし

て、じりじりとその輪を徐々に

縮めてきている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?