ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 76ページ

「・・・助かったのか?俺たち

?」

緊張が解けたのだろう、レオ

が確認しながら座りこんだ。

「ええ、グエン以外は・・・」

凱が苦々しく答える。

「う、うぅ」

「葵ちゃん!しっかりして!」

苦しそうな声を上げる葵に向

かい、優が必死によびかける。

呪いのせいだろう、早く連れ

帰り、ユロフに治療してもら

わなくてはならない。

しかし、あの女性はいったい

・・・。

「どうやら、そなたたちに助け

られたようじゃな」

気付くと、十数人のドワーフ

たちが周りに集まってきていた。

ーー背丈こそ、百二、三十セン

チと、人間の子供ぐらいしかな

いものの、その腕や胸、足の筋

肉からは、彼らのとびぬけた力

強さ、強靭さが感じられ、ほと

んどの者が、口ひげを胸のあた

りまでのばしているのも特徴的

だーー

全員、防具はおろか、武器す

ら持っておらず、素手で戦って

いたようだ。

坑道内が煙で充満し、急いで

外に出たためだろう。

しかし、それでゴブリンやト

ロールとわたりあっていた所を

見ると、フィエルさえいなけれ

ば、遅れをとることはなかった

ように思ぅ。

いや、もしかしたら、武器や

防具が万全なら、フィエルとも

わたり合えたのかもしれない。

「わしは、ここらの鉱山を任さ

れているワジンと申す、受けた

恩は返す、ついてきなされ」

真っ白な口ひげがひときわ長

く、右目の下に、横に走る傷跡

があるドワーフが名乗ると、坑

道へ向かい歩きだす。

「待ってくれ!仲間が呪いだと

かにやられて、急いで戻って治

療しなくちゃならないんだ!」

葵の状態に、緊張感を取り戻

したレオが、ワジンを呼び止め

る。

「わかっておる、だからついて

きなされと言っておるのじゃよ」

ワジンは、そう言うと、再び

坑道へと歩きだした。

ドワーフは、無口な者が多い

と、グエンは言っていた。

おそらく、これ以上の説明は、

してくれないのだろぅ。

時間は惜しいが仕方ない、何

かいい方法がある事を願って、

葵を背負ったレオを先頭に、ワ

ジンの後についていく。


「わぁ~、きれい」

優が思わず、感嘆の声をもら

す。

案内されたのは、坑道内とは

思えない、少し開けた場所だっ

た。

そこには、鮮やかな緑の葉を

揺らす、木々に囲まれた小さな

泉が、とびきり美しい姿で存在

していた。


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