ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 93ページ

″ザザッ!ザザッ!″

ノイズが走る。

ここは・・・バイト先だ、涼

に優、凱に加賀、それに葵もい

る。

そうだ、俺は楠木 レオ、今

日で25才になった。

誕生日なのに、バイトしてい

る自分の為に、涼が企画してく

れたようだ。

目の前に、大きなケーキが用

意されている。

″ザザッ!ザザザザッ!″

『俺がなんとか時間をかせぐ!

そのうちに塔へ向かうんだ!』

(涼?何を言って・・・?)

レオは、立ちくらみがして、

ふらつき転びそうになる。

「おい、レオ、大丈夫か?気を

つけろよ」

そんなレオを、涼が支える。

「すまん、大丈夫だ」

″ザザザザッ!ザザッ!ザザザ

ザッ!″

『追いつかれたら、みんな殺

されるぞ!はやく行け!』

ノイズと共に、涼が遠ざかっ

ていく。

(だめだ!涼!行くな!)

しかし、いくら叫んでも、

声はでない。

『危ない!気をつけろ!レオ!

気をつけろ・・・気をつけろ・

・・気を・・・つけろ・・・』

涼の声は遠ざかり、次第に小

さく、途切れ途切れになって

いく。

「・・・、・・・さん!・・・

オさんってば!・・・レオさん

!起きて!」

目を開けたレオの前には、心

配そうな優の顔があった。

「大丈夫?かなりうなされてた

みたいだったけど・・・」

優が心配そうに、レオの顔を

覗き込む。

「あ、ああ、大丈夫だ、ちょっ

と疲れて眠っちまってたんだな」

(夢・・か・・)

昔の事を思い出すような夢を

みたのも初めてだったが、こん

なに鮮明に憶えているのも初め

てだろう。

とても嫌な夢だった。

母だけじゃなく、涼を失った

ことまで思い知らされるなんて

・・・。

(まてよ?涼は、あの時、なん

て言った?気をつけろ?)

もちろん、夢の中の言葉だ。

しかし、とてもひっかかる言

葉のように思えてならなかった。

「レオさん、私たち王様に呼ば

れてるの、また召集だって、こ

ないだあったばかりなのにね?」

そうは言っても、優はどこか

嬉しそうだ。

筋トレなどより、早く外にで

て、弓矢の練習をしたいのだ

ろう。

「わかった、すぐに行くから先

に行っててくれ」

「はぁーい」

レオは、優を見送ると、簡単に

汗を拭いて着替え、謁見の間へ

と歩きだした。

(・・・涼・・・ただの夢・・

だったのか?)

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