ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 3ページ

~第一章~ 

《 六 勇 者 》

20X2年12月25日

クリスマスの夜

加賀 裕也(19才)は、人生最

大最悪の苦戦を強いられていた。

ーー天パーの茶髪に整った顔立

ち、背は低めだが、それを長所

に変えてしまうぐらいの、愛嬌

を持ち合わせた好青年だーー

十九才という若さ溢れる顔を

今は、ひきつらせていた。

額には汗さえ浮かんでいる。

その汗は決して、着ているサ

ンタクロースの衣裳が暑いから

ではないだろう。

ーーここは東京、池袋ーー

無数のイルミネーションがク

リスマスを演出し、街は、楽し

げな雰囲気に包まれている・・

・とあるカラオケ店の一室を除

いて・・・。

そこは街とはうってかわり、

異様な空気に包まれていた。

裕也は、今さらながら後悔して

いた。

バイト先の先輩である秋水

涼(25才)ーー顔は普通で背も平

均的、男にしては長めの髪を紫

っぽく染めているーーが「クリス

マスに合コンがしたい」と言い

出したのが先月の事。

裕也は、昔から人見知りしない

性格と口が上手い事もあって、

自慢じゃないが結構モテた。

顔にもある程度自信があり、

ナンパや合コンのセッティング

などおてのものだったのだ。

性格は温厚で、いつもニコニ

コして後輩の面倒をみている涼

のことを尊敬していた事もあっ

て、あまり深く考えずに「俺に

任せてくださいよ!」と、安請

け合いしたのが悲劇の始まりだ

ったのかもしれない。

涼の、《美人》、《かわいい

》、という条件を優先して、同

じファミレスのバイト仲間で、

接客担当のーー男性陣は、みんな

料理担当だーー美女四人を誘い、

参加させる事に成功したのだが

・・・。

合コンを始めて一時間は経つ

というのに、この盛り上がりの

なさといったら息苦しささえ感

じてくる。

こんな事は、裕也にとって初

めてのことだった。

今まで数えきれない程の合コ

ンをこなしてきたし、そのすべ

てを、持ち前の明るさで盛り上

げて成功させてきた。

そうゆう経験からくる自信と

プライドがあるし、幹事として

の責任だってある。

ひらいたからには楽しい合コ

ンにしなければならない。

裕也は、自分を心の中で叱咤し、

先程からクスリッとも笑わない

二人に向け、今流行の、芸人の

一発ギャグをやってみせた。

「意味がわかりません」

すぐ目の前から、冷たささえ

感じる声が返ってくる。

「そ、そうか、神楽坂さんは、

テレビとかみない人なんだっけ

?」

裕也は、挫けそうになるのをな

んとか堪え、その声の主に話し

かけた。

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