ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 97ページ

アグリアの合図と共に出現し

た兵達は、統率こそとれてはい

ないが、全員が相当な実力者の

ようだ。

その中の一人が、一早くあた

りの状況を把握すると、獲物め

がけて襲いかかった。

一瞬にして最初の犠牲者が生

まれる。

最初の犠牲者は、宰相のイビ

スだった。

男は、黒と緑の斑模様を全身

に描いている不気味な男で、痩

せている上、背が高いため、ひ

ょろりとして弱々しく見える。

しかし、その動きはすさまじ

く、一瞬でイビスの前に移動す

ると、手にした鎖鎌ーー鎖の両

端に一本ずつ小さい鎌がついて

いるーーで、イビスの胴体を横真

っ二つに切り裂いたのだ。

だが、そこで男は驚きの声を

上げる。

「!?人形[デク]だと?ちっ!逃

げられたか」

男は、悔しそうに舌打ちする

と、次の獲物を捜し求めた。

「おっ!うまそうな奴だ!」

その視線は、優のもとでとま

り、男は鎖鎌の鎖部分を持って

鎌を振り回すと、その遠心力を

乗せて投げ付ける。

「鮮血の宴![ブラッディバンク

ェット]」

鎖鎌が回転しながら加速し、

まだ状況に対応しきれていない

優めがけて、物凄い勢いで襲い

かかった。

~~~~~~~~~~~~~~

「ここは・・・まさかネロの迷

宮!?」

謁見の間に、アグリアの私兵

たちと共に現れた、青く光る壁

と重なる位置にいたユロフは、

気がつくと薄暗い回廊に立って

いた。

しばらく歩くと、迷路のよう

に入り組んでいる構造から、ユ

ロフの頭の中で一つの仮説がう

ちたてられたのだ。

″パチパチパチッ″

「ご名答、さすがは最高司祭殿

だ」

拍手と共に、闇から一人の男

が姿を現す。

男は、腕や肩の辺りから、や

たら布地が長くのびている黒い

礼服のようなものを身にまとい、

腰には、少し歪んだ柄の、漆黒

の長剣を差していた。

しかし、そんな珍しい出で立

ちより、ユロフの目を引いたの

は、その男の顔、正確には、眉

毛とまつ毛であった。

自信と意志の強さを感じさせ

る黒い双眸の周りには、鋭い針

を思わせる硬質化したまつ毛が

あり、その上の眉毛もやはり、

黒い針のように、その先端を尖

らせている。

「!なぜ、竜人[ドラグナー]がこ

こにおる!?」

「それはもちろん、ここを抜け

ようとする者を葬り去るため」

男は、不敵な笑みを浮かべる

と、腰に差していた長剣を引き

抜く。

刀身の幅が広く、少し反りが

あり、六勇者たちが見たら、ま

るで、中国の青竜刀のようだと

思ったことだろう。

その黒い刀身は、闇の中でも、

その姿を隠そうとはせず、不気

味な光を放っていた。


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