ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 186ページ

~~~~~~~~~~~~~~

「準備は整った」

アグリアは、目の前の兵たち

を見ながらつぶやいた。

城の中庭に集められた兵は、

1000人近くいる。

聖ミリアが元々持っていた兵

力と変わらない。

いや、質は上だという自負が

ある。

国ごと結界に包まれたクルン

の動向は気になるが、聖ダリア

が滅びた今、ほとんどの兵をザ

ハンに当てることができる。

ドワーフやエルフたちが、ザハ

ンに力を貸すことはないだろう。

ザハンさえ沈めば、あとはど

うとでもできる自信があった。

それどころか、いままでザハ

ンをおとせなかったのが不思議

なくらいだ。

「アグリア様、号令を」

横にいる参謀のマカラトが促

す。

「ああ、よぉし!てめぇら!お

もいっきり暴れてこいやぁ!」

『おおー!』

兵たちが、我先にと城を駆け

出していく。

一応、騎士団を名乗らせては

いるが、個々が相応の実力を持

つ荒くれ者たち、統率とは無縁

と言ってもいいだろう。

しかし、アグリアは、これで

いいと思っている。

最低限まとめられていればい

い、下手に動きを制限させるよ

り、よっぽど実力を発揮できる

だろう。

そういう意味では、傭兵団に

近いかもしれない。

今は、それでいいのだ、だが

いずれ・・・。

アグリアは、自分の野望がま

た一歩進んでいく音が聞こえた

ような気がしていた。

~~~~~~~~~~~~~~

「アイリか」

シェザリーは、ふと気配を感

じてつぶやくように呼び掛けた。

「はっ!ついにアグリアが兵を

動かしました」

アイリが音もなく現れると、報

告を始める。

「そうか、兵力は?」

「はい、およそ1000ぐらいかと」

「ふっ、なめられたものだな」

シェザリーは、腰にぶら下げ

ている二本の剣を確かめながら

笑う。

「只今、遊撃兵団"影"が罠を仕

掛けて待機中です」

「罠か、そんなものは必要ない

だろうが、まぁいいだろう、我

ら黒騎士団もでる、留守は任せ

たぞ」

シェザリーは、そう言うと静

かに歩きだす。

アイリは、その背中をみなが

ら、心の中で敵兵に向かいつぶ

やいた。

(かわいそうに)

しかし、それとは裏腹に、布

で隠されたアイリの口元に、笑

みが浮かんでいたことを知るも

のはいない。

いま、エリュオンの未来を左

右する戦いの火蓋が切っておと

されようとしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?