ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 167ページ
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「ちっ!せっかく大暴れできる
と思ったのによ!」
「けっ!なんか豚の大将の時と
いい、タイミング悪すぎだぜぇ
~、おかげで何も喰えなかった
からなぁ~」
二人の男が愚痴りながら、元
聖ダリア王国から元聖ミリア教
国へと続く街道を下っていく。
「はっ!あの時は、危うくやら
れそうになってた癖によく言う
ぜ、それにあんな化け物相手に
できるかっての!」
獣顔した男が笑い飛ばすと、
細身の男がそれに反論する。
一人は獣人のようで、ぎらつ
いた瞳に口からは牙のような犬
歯がわずかに顔をのぞかせてい
た。
もう一人の細身の男は、全身
に黒と緑のまだら模様が描かれ
ており、毒々しい印象を受ける。
「ひゃはっ!あれは、デカ豚に
おまえさんがやられてたから、
替わってやっただけだぜぇ?そ
れに化け物って、あの黒い鎧は、
間違いなくザハンの黒騎士だろ?
召集に応じたら、奴とも戦うは
めになるんじゃねえの~?」
細身の男は、斑模様が描かれ
た自分の腕を、おどけた仕草で
さすってみせる。
「・・・いや、ザハンにあんな
のがいたなら、世界は、すでにザ
ハンのものになってるさ、あれ
は、そういう存在じゃねぇ」
細身の男とは、対称的に真面
目な顔をして応える獣人。
「ということはぁ~?」
細身の男が残忍な笑みを浮か
べる。
「ああ、暴れられる」
それにつられるかのように、
同じ笑みを浮かべた獣人が言い
放ち、二人は、野に放たれた獣
のごとく、驚くべき速さで駆け
出したのだった。
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″メキメキメキ!″
″バキン!ゴシャッ!″
すさまじい力で破壊された塊
が地面に崩れ落ちた。
″シュウ~ボコボコボコッ!″
″ガシャンッ!ゴキゴキゴキン
ッ!″
しばらくすると、その塊は煙
を発し、徐々に形を整え始める。
やがて塊は、人の形へとその
姿を変えた。
体はもちろん、目や鼻にいた
るまで、全体的に作りが細い一
人の男へと。
「ふぅ、なんとか入れましたね、
しかし、これほどの結界とは・・
・おや、髪の毛はさすがになく
なってしまいましたか」
男は、さして残念な様子はみ
せずに、いつもの早口で独り言
を言い終えると、岩場に膝をつ
き、辺りを見渡してみる。
近くに人の気配はない。
当然だろう、ここは、自分が
秘密裏に、この自由国クルンを
出入りするために使っていた、
知る人が限られた秘密の入り口
なのだ。
完全に、羽毛の地面に隠され
たような形で、死角になってい
る、翼[フィン]の中では極めて
まれな岩場である。
″ザッ!″
その時、足音と共に男を何者
かの影が覆う!
「!あ、あなたは!」
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