ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 11ページ

それは1m強ぐらいの背丈し

かない、土色の肌に醜い老婆の

ような顔をした化け物で、よく

ロールプレイングゲームなどに

出てくるゴブリンというモンス

ターだった。

ゴブリンは、気付かれたと知

ると、塔とは反対の方角へ足音

もたてずに走り去っていった。

さすがに、凱も冷静ではいら

れなかった。

あんな化け物が他にもたくさ

んいるのだとしたら、こんな所

でグズグズしていられない、それ

こそ、全員殺されてもおかしく

ないだろう。

「おい!話は後だ!急ぐぞ!」

「なによぅ、怒鳴らなくったっ

ていいじゃん!」

涙ぐんだ優が、葵の後ろに隠

れながら凱に抗議する。

(くそっ!女ってやつはどうし

て!)

凱は心の中で毒づいた。

″ズンッ!ズンッ!ズンッ!″

そうこうしてるうちに、地響

きのようなものが遠くから聞こ

えてきた。

それは、徐々に、こちらに近

づいてきてるようだ。

程なくして、塔とは反対方向

から異形の集団が姿を現した。

先程のゴブリンをはじめ、ず

んぐりした体系に豚の顔をした

化け物、その倍近くあろう背丈

の、緑色の肌をした巨人までい

る。

それはまるで、ゲームに出て

くるオークやトロールのようだ

った。

そんな化け物たちが少なくと

も数十体、隊列を組んで歩いて

きていた。

中央には、御輿[みこし]のよ

うなものに乗った一際大きい体

格のオークがいる。

「な、なんなの!?あれ!?」

「ひ、ひぃ!」

それをみた優と裕也が腰を抜

かす。

「くっ!速い!紫音!神楽!葵!

かまわず走れ!!レオ!凱!加賀

と優を頼む!」

涼が叫ぶと、紫音がそれに従

い駆け出す。

「神楽坂です!」

沙織が訂正しながら、あとに

続く。

「どうなってんのよ!もう!」

葵も後ろを気にしながら、塔

に向かい走りだす。

しかし、体の痛みのせいか、

全員思う程速く走れていない。

涼が落ちている木の枝から、

太くて長さのあるものを、いく

つか選んで拾いあげる。

「涼さん!何をする気ですか!?」

裕也に肩を貸して立ち上がら

せた凱が慌てて尋ねる。

「このままだと、逃げても追い

つかれる!俺がなんとか時間を

かせぐ!そのうちに塔へ向かう

んだ!」

「無茶だ!一人で!」

優をおぶったレオが反対する。

「この先にだって危険がないと

は言いきれない!その時は、女

の子たちを守ってやってくれ!」

涼は、集めた木の枝の束を地

面に置くと一人一人に視線をむ

ける。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?