ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 92ページ

「そりゃあ恐いさ、膝が笑って

るよ、でも、ほうっておけな

いだろ?」

「あっ?誰も、そんなこたぁ頼ん

でねぇ!」

レオは、頭に血がのぼるのを

感じた。

自分は、喧嘩で負けたことは

ないのだ。

心配されるなんて、侮辱と一緒

だった。

「それって疲れない?楽しい?」

「うるせぇ!てめえには関係ね

ぇだろ!」

涼の問い掛けに答えられず、

ただ怒鳴り返して、レオは家路

についた。

『それって疲れない?楽しい?』

家に帰っても、涼の言葉が耳か

ら離れなかった。

(楽しいわけねぇだろ!くそっ

!なんなんだ!あいつ!)

レオは、自分がやたら小さく

感じ、それが苛立たしくて仕方

なかった。

それから学校で会っても、涼

が挨拶してきても、無視する日

々が続いた。

正直、苛立たしさは消えてい

た、いや、それどころではなく

なっていたのだ。

どこから嗅ぎつけたのか、ヤ

クザたちは、レオの家に嫌がら

せをするようになり、心労で母

が倒れ、そのまま、あっけなく

死んでしまった。

世界で、たった一人の信じら

れる味方を失ったレオは、もう

全てがどうでもよかった。

一週間、いや、もっとだろう

か、無気力に、ただ体が憶えて

いるというだけで学校に行き、

放課後バイトするといった日々

が続いたが、やがてレオの心に

一つの火が灯る、それは昏く、

重い光を放つ火、そう!憎しみ

だ!

レオが、ヤクザの事務所を突

き止め、バイトで使っている、

土方のスコップを片手にいざ乗

り込もうとしたその時、一人の

男が立ちはだかった。

「手伝おうか?」

涼だった。

「どけよ、てめえには関係ねぇ

っていったはずだ、なんで俺に

かまうんだ?」

レオは、心に生まれた安堵感

みたいなものを押し込めると、

疑問に思ってたことを聞いてみ

た。

おそらく、最後になるであろ

うから・・・。

「うーん、見ちゃったんだよな

ぁ、前に、捨てられてる猫に傘あ

げてたろ?俺は、猫とかわいい女

の子の味方だからさ、そんな奴

がピンチなのに放っておけない

だろ?それに、もう無関係とは言

えないしな」

「・・・ふん!勝手にしろ!」

レオは、照れ臭いのと、嬉しい

のを隠すように、顔を背ける。


レオたちが暴れた後、誰かが

通報し、組の事務所から銃や覚

醒剤が押収された。

警察は、さぞ驚いたことだろ

う。

組員は全員気絶していて、小

さいとはいえ、ヤクザの事務所

が一つ、すでに壊滅状態だった

のだから・・・。

運もあったろうが、母の仇は

討てた、あのヤクザたちは、二

度と外を歩くことはできないだ

ろう。

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