ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 169ページ

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「こ、これは!」

女性は驚きの声を上げた。

ここは、暗黒帝国とよばれる

ザハンの、ゲートフォートとい

う砦の中心に大きく口を開けた、

深い縦穴の底である。

そこに一組の男女が立ってい

た。

一人は、暗黒帝国ザハンにお

いて、魔導兵団“闇”を束ねる

副団長をつとめるディシャナ、

そして、もう一人は、ザハンの

首都ダークタウンの片隅で、小

さなお菓子屋を営む店主であっ

た。

「完全にハメられたようじゃの」

店主がやれやれと首を振る。

二人の目の前には、体を結界

の一部として犠牲にした、ザハ

ン女王の姉エリスの姿があった。

その体をつきやぶるようにし

て、か細い腕が突き出ている。

「くっ!すぐに陛下にかけあっ

て」

「自分の正体を明かすと言うの

か?落ち着きなさい」

うろたえるディシャナの言葉

を店主がさえぎった。

「そんなことをしても、女王の

信頼を失い、立場を悪くするだ

けじゃ」

「ならば!どうせよと・・・言

うのです?」

今度は、店主の言葉にディシ

ャナがかぶせるように言葉をつ

むぐが、自分の声の大きさに気

付き、いつもの冷静さを取り戻

したのだろう、声を抑えながら

尋ねる。

「ふむ・・・」

「それならば、僕が協力しよう」

『!!』

急に後ろから響いた声に、二

人は慌てて飛びすさる。

そこにいたのは、全身紫色の

甲冑に身を包んだ、騎士らしき

出で立ちの男だった。

二人にとって、こんなにも容

易く背後をとられたのは、初め

てのことである。

しかし、紫の騎士は、気にも

止めずに、結界の方に歩いてい

くと、凄まじい速さで剣を一閃

し、エリスの体から突き出た、

か細い腕を斬り落とした。

「!きさまぁー!」

怒りを露にしたディシャナの

額に、三つ目の眼が現れ、魔力

が数倍に膨れ上がる。

しかし、騎士は動じた様子も

なく、斬り落とした腕を拾い上

げると、結界に手をかざし二人

に問いかけた。

「君たちも一緒に行くかい?」


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