ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 191ページ

単純に数で攻めてきていたな

ら、シェザリーの一振りで、間

違いなく五人の首は飛んでいた

ことだろう。

しかし、アグリア帝国の兵た

ちは違った。

シェザリーの強さを感じとる

と、警戒して慎重に、間合いに

入るのをためらっていたのだ。

「ふっ、面白い」

シェザリーは、腰に差してい

る、もう一本の剣も抜く。

「黒陰流魔双剣技[こくいんりゅ

うまそうけんぎ]、゙闇風[やみ

かぜ]゙」

戦場に一陣の黒い風が、いや、

竜巻が巻き起こり、10数人が数

十枚の肉片と化す。

「へぇ~、強いねぇ」

新たにやってきた兵の中から、

明らかに異質な存在が歩みでて

きた。

「!ドラグナーか?」

硬質化し、上下にわかれた眉

に、同じく硬質化したまつ毛、

髪は、今にも燃えだしそうなぐ

らい赤く、両腕は、真っ赤な鱗

に覆われている。

おそらく、火竜人なのだろう。

男の表情は、ヘラヘラしてい

るが、すでに目覚め[ウェイク

アップ]状態なことからみても、

戦う気満々なのは間違いない。

「黒騎士団[ブラックナイツ]騎士

団長シェザリーだ、こい」

シェザリーが二本の剣を構え

直す。

「竜騎士団[ドラゴンナイツ]、副

騎士団長、赤竜のイグナス、い

くぜ!」

男は、名乗りに応じると、炎

に包まれた剣を振り上げた。


「やっぱり、離れといて正解だ

ったぜ、団長のそばにいたら、命

が、いくらあっても足りゃしねぇ

や、ねぇ、姐さん」

顔半分を仮面で隠した、醜悪な

男が、隣で戦う女に声をかける。

「集中しな!デゴン!こいつら、

ただのザコじゃないみたいだ!」

声をかけられた女は、不気味

な緑色の光りを放つ黒い大剣で

敵を斬りつけながら、男に応え

た。

黒騎士団[ブラックナイツ]No

.1の実力者と言われるエゲリ

アと、自称No.2のデゴンであ

る。

エゲリアは、女性にしては大

柄で、その、がっちりとした体

型は、肉体が、まんべんなく鍛

え上げられている事を物語って

いるかのようだ。

長い黒髪は、くるくると巻い

ており、目と口にされた青紫の

化粧が、彼女を化け物のように

見せている。

「ぐぁぁ!」

エゲリアにかすり傷を負わさ

れた男の腕が、みるみるうちに

腫れあがっていく。

彼女が振るう大剣の名は、ポ

イズンソード、その名の通り、

強力な毒の力を宿しているのだ。

しかし、アグリア帝国の兵た

ちは、それを見抜くと、すぐに

魔法で仲間を癒してしまってい

た。

「わかってまさぁ、蛇剣マイラ

がなかなか喰らえずにイライラ

してやがりますからね、おい!

コアトル!少しだけ力貸せや!

姐さん!」

デゴンの左腕を覆う包帯の隙

間から、紫色した気体が溢れだ

す。

「ああ!昂ぶれ!ポイズンソー

ド!」

エゲリアの大剣からも、緑色

の気体が立ちのぼり始めた。

「いくよ!デゴン!」

「了解ですぜ!」

二つのまがまがしい気体が混

ざり合うように渦を巻く。

『咲き乱れろ!毒華[どくばな]

!』

二人の声に呼応するかのよう

に、緑と紫が入り交じった毒の

華が戦場に咲き乱れ、それを受

けた兵たちが、一瞬で絶命する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?