ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 70ページ

「そ、そんな馬鹿な・・・」

グエンの視線の先には、一際

大きな化け物がいた。

人間の二倍以上はある体躯、

灰色の肌、頭に角が生えている

その姿は、話にきいていた魔王

フィエルそのものだった。

唯一、違いをあげるとすれば、

頭の角が2本ではなく、3本生

えているとこだろうか。

「魔王・・・なのか?」

つぶやいた凱の言葉に、レオが

反応する。

「てことは、やつを倒せば、俺

たちは自由ってことか!俺が倒

してやる!どけぇ!うおぉー!

なぎ払い!・・・ぐっ?」

近くにいたゴブリン数体が、

レオの大剣の一撃に、横に払わ

れて吹き飛び絶命する。

しかし、化け物がこちらに気

付き、金色の双ぼうを向けた途

端、レオの動きが止まる。

(くっ、くそ!これは恐怖!?)

レオは、相手の強さがわかる

ぐらいにまでは成長していた。

あの化け物には、どうやって

も、今の自分たちではかなわな

いことを、肌で感じとったのだ。

「無理するな!本来ドワーフた

ちは、一人一人が屈強な戦士だ

!不意をうたれたとしてもゴブ

リンやトロールに遅れをとる連

中じゃない!これだけのドワー

フを殺せるだけの力を持ってい

るということは、やつが魔王フ

ィエルに違いない!逃げるぞ!」

グエンは、そう言ったが、グ

エン自身も化け物から目が離せ

なくなっていた。

背をみせるのは危険だと、直

感が告げていたからだ。

「葵ちゃん!しっかりして!」

その時、優の声が響く。

葵は、ようやく理解した。

嫌な予感の正体はこれだった

のだ。

それは最大に膨れ上がり、い

まや呼吸さえままならない。

優の声も、少し遠くに感じる。

葵の意識が暗転するかと思え

た時、ラーに仕える神官[クリ

プト]、ラシエルに貰った導き

の腕輪から柔らかな光がもれだ

し、葵を包みこんだ。

(・・・おさまった?)

しかし、まだ吐き気や悪寒の

ような感覚はなくなっていない。

おさまったというよりは、和

らいだといったところだろう。

「生命の守り[ライフガード]!」

神楽が蒼ざめながらも、全員

の防御力を上げる。

「おまえたちは逃げろ!ここは

俺が食い止める!」

グエンは言い放ち、剣を抜く

が、誰一人動くものはいなかっ

た。

グエンの姿が、涼と重なって

みえたせいだ。

もう、あんな思いをするのは

ごめんだと、誰もが思っていた。

その時、化け物が驚くほどの

速さで数歩踏み出し、少しくぐ

もった声で問いかけてきた。

「もしや、おまえたちが六勇者

とかいうやつらか?」


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