ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 102ページ

聖ダリアにいた時は、オルフ

ァの事を知らない者はいなかっ

た。

だが、オルファの顔と名前を

知る者は、ほとんどいない。

なぜなら、常に赤い全身鎧に

身を包み、顔は、兜にすっぽり

と隠されていて、周りの国々の

みならず、仲間内からも、恐怖

と憎悪を込めて、"赤光の殺戮

者[しゃっこうのさつりくしゃ

]"と呼ばれていたためだ。

国王の命令とはいえ、それほ

ど多くの人間を無慈悲に殺めた。

神殿騎士団長に任命された時

は、素直に嬉しかった。

貧しい家の生まれだったオル

ファは、人一倍努力したからだ。

しかし、現実は残酷だった。

国王であるダリアⅡ世は、救

いようのないほどの愚王で、前

王にも増して民を苦しめ、他国

への侵略も手段を問わず行った

のだ。

病に伏していた母を助けるた

めとはいえ、なんの罪もない人

々を手にかけることに抵抗がな

かったわけではない。

だが、女手一つで自分を育て

てくれた母を見捨てることがで

きなかったオルファは、国王に

命令されるがまま、その手を血

に染めた。

赤い鎧を選んだのは、殺した

者の血の色を忘れないため、剣

の柄に魔力でできた鎖を巻き付

けたのは、自分の心を縛り付け

るため・・・そうやって、兜の

中で血の涙を流しながらも、悪

鬼のごとく剣を振るう、赤光の

殺戮者が誕生した。

その殺戮者が裏で、国王に感

付かれないように、敵国の人々

を他国へ逃がすために尽力して

いた事を知る者はいない。

母は、その数年後に病により

息を引き取った。

とても悲しくはあったが、心

のどこかでは、ほっとしていた。

もう殺さなくていいのだと・

・・。

オルファは、神殿と国王を決

別させるべく奔走したが、仲間

に裏切られ、危うく処刑される

ところだっだ。

母が死に、赤い鎧を脱いだオ

ルファは、かつての仲間を殺め

ることはせず、逃げる道を選ん

だ。

そして、聖ミリアに落ちのび

たオルファは、ひっそりと身を

隠して暮らしていた所を、クラ

テスに見初められて四天の一人

となったのだ。

最初は、クラテス程の実力者

が仕えてる人物への興味からだ

ったが、レーラの飾らない素直

さや、明るさ、優しさに次第に

ひかれていった。

何より、自分を家族と思って

くれているのが嬉しかった。

その家族を守るためなら、再

び殺戮者と言われても構わない。

剣の柄に再び出現させた鎖は、

その決意の証だ。

目の前の敵たちは、殺さない

ようにと手を抜いて勝てる相手

ではないだろう。

オルファは、ゆっくりと剣先

をマカラトへ向け、構えなおした。

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