ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 64ページ
~第三章~
《 真実のかけら 》
「はぁ!!」
″シュッ!″
槍が空[くう]を裂く。
「踏み込みが甘い!」
″ドスッ!″
「ぐっ!」
″ドッ!″
凱は、本日五度目になるであ
ろう、膝をついた。
凱たちが修業を始めて、約一
ヵ月が経とうとしている。
成長は目覚ましくーー体が思
い出すといった感じだがーーつ
い先日、ようやく全員、基本職
に就くことができた。
これから、さらに腕を磨き、
階級[クラス]をあげよ、とラシ
アルは言っていたが、階級[クラ
ス]が二つも違うとはいえ、こ
うも歯が立たないと、自信もな
くなってくるというものだ。
再び起こった、ラシアルとレ
オのかけあいを思い出しながら、
凱は、目の前に立つ男に目を向
ける。
「どうした凱、もう終わりか?」
目の前には、黒髪を目元まで
のばした、一見きゃしゃにみえ
る男が、汗一つかかずに立って
いた。
いまでは彼は、凱にとって、
師匠であり、兄のような存在に
なりつつあった。
彼が試練の塔から傷だらけで
出てきたのをみた時は、ここま
で仲良くなるとは夢にも思って
なかった。
彼、グエンとは歳も近く、六
勇者だという目でみない彼の態
度が、凱を安心させたせいかも
しれない。
彼は今でこそ、聖騎士になり、
剣を使っているが、幼少の頃よ
り従者[アテンダー]として槍で
戦っていたため、槍の方が得意
なのだという。
「おお~い!」
そんな時、遠くの方からレオ
が手を振って駈けてくるのが目
に入った。
近くには、レオに大剣の扱い
を教えているグレニア将軍の姿
もある。
「俺たちの初仕事が決まったら
しい!」
レオは、凱の隣にくると、興
奮した様子で言ってくる。
きっと自分の力を試せる機会
を、ずっと待ちわびていたの
だろう。
凱にだって、そういう気持ち
がないわけではない。
「全員に声をかけ、謁見の間に
来てくれ、我々は先に行ってい
る、グエン」
後から来ていたグレニアが付
け加え、グエンを呼ぶ。
「はっ!凱、またあとでな」
グエンは、凱の肩を軽くたた
くと、先に城に向かい歩きだし
ていたグレニアの後を追ってい
った。
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