ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 192ページ
「へっ!俺たちの敵じゃねぇな!
ねぇ?姐さん」
デゴンが得意気に、エゲリアに
声をかけた。
「いや、そうでもないみたいだ
よ?」
エゲリアが、そう応えるのと同
時に、毒の華が消え去ってしま
った。
そして、一人の男が現れる。
「やれやれ、面倒なことになり
そうだねぇ」
現れた男の出で立ちに、エゲ
リアは嫌な予感を感じたのだっ
た。
~~~~~~~~~~~~~~
″シュン!″
「!」
ザハンの玉座の後ろにある魔
法陣に一人の女性が現れた。
ドレスであったろう服は、ボ
ロボロに破れており、血にまみ
れたのか、全身についた土と泥
が固まっている。
女性は、ふらつきながら玉座
に座ると、驚きかたまっている
女性に声をかけた。
「アイリと言ったかしら?ルミ
ナとシェザリーさんは、どこに
?」
アイリは、予想外の出来事に
珍しく動揺していた。
姿を隠していることに慣れす
ぎたせいだろうか?
いや、魔女であり、吸血鬼[ヴ
ァンパイア]の始祖、ノスフェ
ラトゥを喰らい、吸血鬼女王[ヴ
ァンパイアクイーン]となった
圧倒的な力を誇る彼女が、ここ
までボロボロになっている姿を
見ることがあるとは思わなかっ
たからだろう。
そう、魔法陣から帰還したの
は、ザハン女王の姉、エリスで
あった。
それでも、アイリは、すぐに、
いつも通りの冷静さを取り戻し、
自分の中にある感情を悟られな
いよう隠しながら、その問いに答え
る。
「・・・はい、エリス様、陛下
は混沌の地へ、シェザリー殿は、
攻めてきたアグリア帝国軍を撃
退に向かわれました」
「アグリア帝国?・・・ああ、
聖ミリアを乗っ取ったとかいう
・・・そう、あのこは混沌の地
へ・・・事態は、思ったより複
雑なようですわね」
身なりに気をつかっている彼
女が、こんな姿のままというこ
とは、これっぽっちの魔力も残
っていないのだろう。
「ふぅ~、少し眠らせてもらい
ますわね」
エリスが大きく息を吐き出し
目を閉じる。
その時、アイリの手元がきら
めいた。
「くはっ!なっ!・・・なに・
・・を?」
エリスの体に8本もの太い銀
の針が刺さっている。
「この時の為に、私は生きてきた
のだ!滅びろ!化け物!八頭竜
流禁術[おろちりゅうきんじゅつ]!
八頭神竜封滅殺陣[やずがみりゅう
ほうめっさつじん]!」
エリスに刺さった8本の銀針
が稲妻で結ばれ、周囲に風が巻
き起こり、石畳が槍と化して襲
いかかる。
それと共に、冷気が立ち込め、
闇が収束し、光が弾けて一気に
燃え上がり、水が生まれ降り注
いだ。
「っっっ!」
″バシュン!ボッ!ボッ!ボン
ッ!ザザー!″
断末魔の叫びも残らず、エリ
スの体が崩れ、水と共に流れさ
る。
″ドサッ!″
「はぁ!はぁ!」
アイリは、全身から血を流し
突伏した。
術に、身体が耐え切れなかっ
たのだ。
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