ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 5ページ

裕也は、二人を引き留めたい

という激しい衝動に襲われた。

二人がなにかとフォローして

くれていたから、今までなんと

かやってこれたのだ。

二人がトイレに消えた事で、

裕也は今まで以上の息苦しさを

感じずにはいられなかった。

~~~~~~~~~~~~~~

「裕也君、ちょっと可哀想だっ

たね」

トイレに入るなり、優が口を

開いた。

「あれー?優は、涼さんじゃな

かったっけ?」

葵が、からかうように、優の

顔を覗き込む。

「そんなんじゃないよー!確か

に、涼さんは優しくて好きだけ

ど、お兄さんみたいなもんだし、

それに、裕也君が好きとかじゃ

なくて、可哀想って言っただけ

だもん!からかわないでよー!」

優は、頬を膨らませて抗議し

た。

「ごめん!ごめん!でも、さす

がに、あの空気はきついよね~、

あの沙織さんと紫音さんが来た

だけで、奇跡みたいなもんだけ

ど・・・」

葵は、加賀に頼まれて、優と

一緒に、ダメもとで二人を誘っ

た時の事を思い出す。

バイト中の沙織は、生真面目

にも、自ら私語を禁じているら

しく、仕事のこと以外、ほとん

ど話した記憶がない。

予想に反し、二つ返事で、「は

い、わかりました」と言われた

ときは、驚きのあまり、「え?」

と聞き返してしまったほどだ。

だが、それよりも、もっと驚

いたのが、早川 紫音(22才)

だった。

紫がかった髪と瞳が魅力的な

美女で、これ以上ないと思わせ

るぐらい整った顔をしている。

葵も、顔には多少の自信を持

っていたが、彼女と比べると、

かなり見劣りしてしまう。

ただ、表情というものに欠け

ているので、男たちは近寄りが

たいようだ。

言葉数も極端に少ないため、

時々、人形なのではないかとさ

え思ってしまう。

そんな彼女が、「男性は誰が

?」と聞いてきた時も耳を疑っ

たが、涼の名前をだした途端「行

く」と言ったのには、夢でもみ

ているかのようだった。

無表情な顔からは、彼女の真

意を読み取ることはできなかっ

たが、いま思えば当然のことだ

ったのかもしれない。

涼は、バイト仲間の中では最

年長という事もあってか、新人

の面倒見が良く、紫音が新人の

時にも気さくに話かけ、色んな

事を教えたりしていた。

紫音が客から「無愛想すぎる」

とクレームを受けて、店長に注

意されてる時も、かばってあげ

ていた。

心細い新人には嬉しかっただ

ろうし、それで涼に好意を抱い

たとしても不思議ではないだろ

う。

今日も黒のワンピースに黒の

ボレロと、いつもとは、違う服

装で、涼の前に座っていること

からみても、ほぼ間違いなさそ

うだ。

彼女に、そんな感情があれば

の話だが・・・。

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