ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 75ページ

グエンが微笑みながら、凱に

向かって何事かつぶやく。

もう声がでないのだろう、口

からは、空気がもれるだけだっ

た。

しかし、凱は、口の動きから、

グエンの言葉を読み取る。

(が・い・い・き・・ろ、凱、

生きろ!)

その時、グエンのすべてが砂

となり、大地に還った。

「グエェーーン!!」

凱の中で感情が膨れあがる。

(まただ!また大切な人を失った!

神がいるだと?ふざけるな!いる

ならなぜ!?)

凱は、神を恨めしく思うと同

時に、無力な自分への怒りが膨

れ上がり、それは、精神ごと呑

まれてしまうのではないかと思

える程だった。

「お別れは済んだか?ならば死ね!

暗黒球[カオスティックボール

]!」

フィエルが容赦なく魔法を解

き放つ。

「来るぞ!」

レオは、勇気をしぼりだすよ

うに、大剣を握りなおした。

(諦めてたまるかよ!)

レオが苦しまぎれに振り下ろ

した大剣に当たるかと思えたそ

の時、黒い球は、かき消えてし

まった。

「!?なにをする!邪魔するなと言

ったはずだぞ!」

フィエルが、女性に向かい怒

りをぶつける。

「あら、ごめんあそばせ、少し、

このこたちに興味をもってしま

って・・血の味も知りたいです

し・・言葉使い・・・ふぅ、も

う結構ですわ、消えておしまい

なさいな、黒き牙[ブラックフ

ァング]」

女性は、フィエルに向かい手

をかざす。

すると、その手から無数の黒

い帯が現れ、フィエルへ向かい

襲いかかる。

「なにっ!?くっ!暗闇の壁[ダー

クネスウォール]!」

フィエルは慌てて、防御魔法

で身を守るが、黒い帯は、意に

介さないようにつきぬけて、フ

ィエルの体に触れる。

そして、黒い帯が触れた部分

が、獣に噛みちぎられたかのよ

うに削れていく。

「ぐあぁ!がっ!ぐっ!お、おの

れ・・ぐあぁぁ!」

″ガシュッ!ガシュガシュガシ

ュッ!″

フィエルは、恨みの声を残す

と、欠けらさえも残さずに世界

から消滅した。

圧倒的な力を持つ者を、圧倒

的な力の差でほうむってしまっ

た者が、ゆっくりと口を開く。

「さて、掃除も済みましたし、

帰るとしようかしら・・・あな

たたちは、もっともっと強くお

なりなさい、その時に、改めて

血をいただきますわ、せいぜい、

あのこの期待を裏切らないよう

に頑張りなさい」

「待って!葵ちゃんの呪いを」

「そこまでしてあげる義理はな

くってよ?そのくらいは、自力

で解いてみせなさいな、それで

は、再び会う時まで、ごきげん

よう」

優の願いは聞き入れられず、

女性は、手から出現させた闇と

共に、その姿を消してしまった。

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