ガイアストーリー 第一部 勇者たちの冒険 96ページ

「シュリ!オルファ!時間を稼

いで!一旦退くわ!」

レーラに、いくつもの魔法を

かけ終えたレミアが、二人に

指示をだす。

こんな状況でも、彼女の妖艶

さは少しも変わらない。

「承知!」

「わかりましたわ!」

ちょうど、アグリアとラグレス

の間に落ちてきたシュリがアグ

リアと、そしてオルファが空中

に浮かぶ漆黒のローブの男、マ

カラトと対峙する。

レーラとレミアの周りにも、

十数人もの兵が現れていたが、

レミアの魔法の助けを借りたレ

ーラの斬撃により、一瞬の内に

絶命していた・・・一人を除い

て。

「ああん?どんな魔法を使った

ら、そんな芸当ができんだ?様

子をみといて正解だったぜ」

その男は、大柄で、獣を思わ

せるぎらついた瞳に逆立った太

い眉、茶色のボサボサした髪は、

もみあげが口元近くまで伸びて

いる。

露出した腕は毛むくじゃらで、

伸ばされた爪が鋭く尖り、人間

の体など易々と切り裂いてしま

いそうだ。

革鎧を身につけ、両腰には手

斧が下げられているが、手に

する様子はない。

「はぁ、はぁ、はぁ」

レーラは、すでに肩で息をし

ていた。

レミアの魔法の助力により、

十数人の兵を一瞬で倒すことが

できたが、かなり体に負担がか

かる方法だった。

それだけ危険な連中だったの

だろう。

しかし、一人残っていたのは

計算外だった。

しかも、目の前の男は、他の

連中とは比べものにならない程

の強さだと、レーラの直感が告

げている。

(この男、強い・・・)

レミアは、時間を稼いでちょ

うだいと、レーラに、さらに強力

な防御魔法をかけると、すでに

魔法に集中し始めていた。

城を囲む巨大魔法陣による結

界内では、普通の人間には魔法

を使うことすらできない。

敵兵がどうやって現れたかは

わからないが、先程レーラが試

しに唱えた魔法が発動しなかっ

たことからみても、城の結界は

まだ健在のようだ。

いくらレミアでも、この結界

の中では時間がかかるだろう。

それに、レミアに目印[シー

ル]されてない人間がほとんど

の上、彼らとは、敵兵と共に出

現した青く光る透明な壁によっ

て隔てられていた。

この状況で全員を魔法で脱出

させるなんて芸当は、きっとレ

ミアにしかできないことだ。

レーラは、歯をくいしばると

剣を構えなおす。

レミアがくれた、持つ者の傷

を徐々にではあるが癒してくれ

る、癒しの宝剣だ。

幸い、結界は装備品に限り、

攻撃系の魔力にしか働かない為、

レーラの装備品の魔力は失われ

ていない。

(やってやるわ!)


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