見出し画像

イケムラレイコ


 2019年、結構な数の展覧会を見たが、常設の李禹煥美術館などを除けば、一番良かったのは「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」だった。

 イケムラレイコに関しては、ほとんど予備知識がなく、たまたま時間が空いてて、ふらっと見たのだが、あまりの良さにびっくりした。

 キャプション等を読むと、海外でもかなり高い評価をされている作家だったようで、なんで知らなかったんだろうという感じだが、この機会にこの作家を知られて良かった。

 というより、その後、国立近代美術館の常設などでも作品(冒頭の写真のもの)を見たので、以前にも何度か作品を見ていたことがあるんだと思うが、本来、あまり好きなタイプの絵じゃないようにも思うので、あれぐらいまとまってないとちゃんと分からないところがあるのかもしれない。

 そもそも作品の写真映りも実物に比べてあまり良くなくて、本当に「時間があまりなくてすぐ入れる」などの消極的条件が重なった上での「見てみるか」だったので、見られて、超ラッキーだったとしか言いようがない。

 作品は抽象性の高い具象画がメインという感じで、ドローイング(図像)的には筆致が早そうでダイレクト感があるが、効果的には抽象表現主義的な絵の具の重層性が肝なのかなと思う。なので、先日見た埼玉近美での「ニューヨーク・アートシーン」にあったゴーキーの絵(滋賀県立近代美術館蔵のもの)などもそうだったが、複製を見るとイマイチなんだけど、実際に見ると素晴らしく良い!みたいな効果がイケムラレイコの絵にも生じているように思う。そして、その辺で伝えるのが難しい作家だと思うが、こういう作家がキチンと評価されているところに美術の世界の厚みを感じられなくもない。

 展覧会のチラシが絵ではなく、陶器だったのもそのせいだろう。写真にした時にどちらの見栄えが良いかというと、陶器の見栄えの方が良いように思う。しかし、やはり、その真骨頂は絵の方にあるのではないか。

 前提となる知識がほとんどないので、印象以外であまり語れることはないが、美術・芸術の場合、そういう出会い方の方が貴重と言えば、貴重で、その意味でも、今年、この作家を知られた事が一番の経験だった気がする。国内でも、かなり頻繁に展示がある作家のようなので、機会があれば、今後も注目して見てみたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?