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【小説】どこでもナビ #逆噴射大賞2022

 湯山学は人類の未来を変える画期的な装置を発明した。
その装置の名は、どこでもナビゲーション。通称「どこでもナビ」だ。

 湯山はかつての教え子であった御手洗六助を呼び出し、まだ実験段階であるこの装置を試してもらうことにした。

 六助が到着すると湯山は早速、装置の説明に入った。
「ここにカーナビがある。この銀のペンで好きな場所を指せばその場所に瞬間移動できる装置だ。つまり平たくいうとテレポーターだな」

「先生!凄い装置ですね」
六助はカーナビを持ち上げ、上下左右を見回している。
「六助君、そっちじゃない。どこナビはこの銀のペンの方だよ」

 六助は湯山から銀のペンを手渡された。
「じゃあ、試しに隣町のファミマを指してみます」
 六助がペンでカーナビに触れた途端、ジリジリと周りの空気が震え、瞬時に姿を消した。

 30分後、六助が歩いて帰ってきた。
「先生、隣町には移動したのですが、そこはファミマではなくセブンでした」

「そんなはずはないさ。それは分かっている。このカーナビは少し古くてね。隣町のファミマは一年前にセブンに替わったはずさ」

「なるほど。25時の電話のベルか。では次はもっと遠くへ。そうだなぁ。久しぶりに僕の田舎に行ってみますよ」
そうゆうと六助はカーナビの画面を何度もスクロールした後、ある場所をペンで差した。

ジリジリと周りの空気が震えだし、六助の姿が消えた。

◇◇

 一瞬、真っ白な光に包まれた。光の中で六助が目を開けると、そこは見覚えのある田んぼの畦道だった。なんだか懐かしい空気の匂いだ。右手は銀のペンを握ったままだ。

「誰か助けて〜!」

 声のする方を見るとそこは肥溜めだった。
六助は肥溜めを覗き込んだ。
肥溜めの中で男の子が溺れている。

「鉄夫?鉄夫やないかー!」

男の子が答える。
「お、お兄ちゃん!
 サ、サ、サヨリや鯛好きな人......」


(つづく)





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