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長嶋有さんの「トゥデイズ」を読んだら感想文を書きたくなった

久しぶりにきちんと小説を読んだので、せっかくなら感想文を書きたくなった。
小説は読むのがだるい、とSNSでみかけてそうだよな、わかる。と思った。
この本を知ったのは、長嶋有さんことブルボン小林さんのラジオを聞くようになったからだ。そこで、本書について触れていた。私が気になったのは「トゥデイズ」ではなく、その巻末に収録されていた「舟」だ。
今回小説を読み切れた理由としては、ラジオで語っていたことが、多少なりとも小説に反映されているのが面白かったからだ。
たとえばコワーキングスペース。ラジオでは途中までワーキングスペースと言っていたけど、これはコワーキングスペースなのでは?と言い直している、と言った話だったり。
ラジオでブルボンさんが話す言い回しが登場したりして、おお、あの人が書いているんだ、と楽しかった。
この本はあるマンションで起きた飛び降り自殺から始まる。登場人物は同マンションに住む家族の主に両親だ。2人には5歳の男の子がいる。飛び取りの騒ぎに気づき、野次馬をする美春。しかし詳細はわからず、部屋に戻ると入れ替わりで恵示が今度は野次馬に。
翌日も騒ぎにはならず、もんもんとする美春。
それからマンションの理事、バイト、子育てなど生活を送っているが、都度引っかかる飛び降り。
マンション自体は事故物件にはならなかったものの、どこか腑に落ちない。気が晴れない。

私は読んでいて後半になんとなく概要がわかったとき、とても嬉しかった。何の話だろうな、と思っていたのが納得する感じだった。
読後感も好みだった。気分が良かった。
それを感じていただきたいので、気になる方はこの辺で、ぜひ本を読んでください。
以下続く
















さて、ネタバレになりますが、私にはこの本は、生きていたら都度このままでいいのか、という悩みが出てくると思います。そういうのを抱きながら、受け入れたり、受け入れられなかったり、共存しようとしたり。そういう生き方の本だと感じました。

殺人事件が起こったことで名の知れた街。
その街で住むことが嫌になっている、しかし生活の基盤ができていてすぐに変えることも難しい。この本では、飛び降りや殺人事件など、センセーショナルな出来事をきっかけに人々が悩んだり、気にかけたりしていますが、私達の日常では人からはそんなに気にされない、些細なことがそのきっかけだったりしますよね。
殺人事件のあった街だと知っていて、むしろ家賃が安いのではと引っ越してきた2人。そしてマンションでの飛び降り。そのどうにも後味の悪い出来事が身近で起こったこと、しかし人々の、私達の生活は続くこと。離れていく人もいて、そこで暮らし続ける人もいる。
本書の2人は暮らし続けることを選んでいる。
この先がどうなるかはわからないけれど。
生活があって、人との交流があって、それぞれに悩みがあって。しかしみんな生きている。生活している。
どこで生きても良い。離れてもいいし、残ってもいい。

生きることが描かれた本だと思いました。
そう感じたとき、とても嬉しかった。

小説を普段読みません。エッセイが好きです。生きた人間の言葉が好きです。小説は、どこか作り話ではないか、と思ってしまい離れていました。
しかし、この本は人間が描かれている。
とても興味深かったです。あと後半から読後まで興奮しました。わーすごい!面白い!小説ってすげー。と。

先でも言いましたが、作者の長嶋有さんことブルボン小林さんと古賀及子さんのラジオが楽しく、御本人やラジオで語っていたこととの共通点を探しながら読むことが楽しくて、読むモチベーションでした。夜に読み始め、翌日の昼に一気読みしました。
言葉が度々わからず、検索しながら読むのも久しぶりで面白かったです。小学〜中学あたりではよくやっていたのを思い出しました。

しかし、これからは小説も読んでいきたいな、と思わせてくれるモチベーションをこの本はくれたのです。
こんなに嬉しい読み終わりがあるならば、喜んで時間を割いて本を読みたい。YouTubeもTwitterも楽しいけれど、この一連の物語でしか得られない感情がある。それを教えてくれたのですから。

とても楽しい読書体験でした。
ラジオは最新からと古いものからを気分で聞いているので、真ん中を聞いていない状態です。
これからも、じわじわ時系列を前後しながら、楽しみたいと思います。推し作家さんができてハッピーです。やった!

こんな話を作る作家さんはすごいなと思いました。本当に面白いのがすごい。
終わらないので終わり。

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