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記録しておきたい記憶Vol.02

これは19歳の12月31日の出来事。

当時、警備会社でアルバイトをしていまして、金のない学生にとっちゃ、年末年始なんて関係ない。
それこそ、「年末年始手当て」を狙ってバイトはいりまくりな生活。

そんな頃のお話です。

24時間の1人勤務

古い大きな工場に毎週末レギュラーで勤務していまして、勤務帯は土朝から日朝までと日朝から月朝までの24時間勤務です。
そのときは確か土朝~日朝勤務だったかな?

24時間といっても仮眠時間もあるし、主な業務は電話番と定時に巡回にでるだけの簡単な勤務、しかも大晦日ですからね、電話もかかってきません。
結構、のんびり出来る仕事場でして(一人勤務)、やることやってりゃ特に問題もない場所で、よく学校の課題やってたりしてたのを覚えてます。

ただ、問題があるとしたら、結構治安はあまり良くない、と言われてる一帯で工場にシンナーが置いてあるので、それを吸いにたまに地元のヤンキーが侵入してくるから、それを防ぐのと、発見したら(危険なので)警察に通報すること、それぐらいです。

ん?並木の上に火がある

その日も22時の巡回を終え、24時の電話報告したら、あとは寝るだけ(早朝5時に巡回出るから早めに寝る)という状態でして、控え室でテレビを見てました。

大晦日ですからね、テレビも色々やってるし、紅白も見てたかな?
ここで簡単に位置関係を説明しますと事務所内に「警備室」と呼ばれるロッカーやパーテーションで区切られた一画がありまして、その横が控え室。
大きめの会社でもよく入り口に警備室あって、って感じですよね。あんな感じです。
その警備室の前には正門があって、来客受付や電話応対などが出来るようになってます。そしてその警備室から外を見ると、大きなマンションと並木、そして公園が視界に入ります。

23時20分ぐらいだったかなぁ。
テレビも見終わり、控え室から出て警備室の机に座り、ボケーっと外を見てました。

ふと窓の外を見ると、ちょっと明るいんですよ。
「ん、なんだ?」と思ってよく見るとそれは「炎」の明るさでした。
ちょうど、並木の上ぐらいの高さです。

僕は「何で???並木の上に???炎があるんだ?・・・・・・」と不思議に思った瞬間、

「あ、火事じゃん!!」

ということに気づきました。

すぐさま、工場を飛び出し、近くまで確認にいきます。

マンションが火を吹いてる

よく見ると、それは並木が燃えてるんじゃなくてその後ろのマンションの部屋から轟々と炎が出てる。
おいおい。シャレにならんぞ、と思いながらもソッコー消防に電話。
幸い、電話の目の前に工場の住所が書いてあったので、通報自体は無事に終了。

で、次に気づいたのが自分がいる工場には「大量のシンナー」が置いてある、ということ。
火の粉飛んできて、引火したらそれこそ大惨事。すぐさま会社に電話。

「目の前が火事なんですよ。どうしましょう?」と聞くと、
「工場に火の粉は飛んできてないんやな?で、消防にも通報した。んなら、お前はそこを動くな、絶対現場とか行くなよ」とクギを指されました。

さすが、僕をわかってらっしゃる、こういうとき大体首を突っ込んでいらんことするのが僕(笑)
会社からおとなしくしてろ、とは言われたものの、そのまま座ってるだけも出来ずに、警備室から外に出て、下から眺めてました。

元々、人通りも少ない路地かつ大晦日で辺りはまだ静か。
2~3人の人が下から僕と一緒に炎を眺めてます。
確か4階だったかな、そんな上の方でも下にいる僕らはあったかいんですよ。その火力の強さわかります?

なかなか着かない消防隊。
大晦日+道が細いので(路上駐車も多い場所だし)時間かかってるかも知れない。

徐々に大騒ぎに

徐々に人が増えてきて、辺りも異変に気づきだした。
ざわざわと至るところで声が聞こえ始め、同じマンションの住人の方も気づき出しました。
ふと気づくと、視線を感じるんですよね。周りの(気のせいかもしれないけど、後ろ振り返ってみて、後ろの人と目が合う。横見て、横の人と目が合うのって、確実にこっち見てますよね)。
どこ見ても目が合うってことはそういうことですよね。

勤務中なんで当然、制服着てるんですよ。警備の。
で、警備の服って若干「警察」に似てたりするじゃないですか。というか抑制効果があるように警官の制服に似せるんですけどね。
おまけに外は暗いから見分けつきにくいですよね。「あれ?もしかして警察と勘違いされてる・・・?」みたいな。

周囲の人の目がこう言ってます。

「お前、(救助に)行けよ。」と。

無言のプレッシャー。


一気に頭の中には怖いイメージでいっぱいに

何かいたたまれなくなってきて、不思議ですね、「あ~やっぱ行かないとマズイのかなぁ」なんて思えてきちゃって。
いや、確かにこーいう時にやたら張り切るタイプではあるんだけど、会社からも止められてるし、炎の勢いハンパじゃないから、さすがに膝震えてる。
膝の振るえVS周囲の目の闘い。軍配は周囲の目に上がりました。
僕はビビリながら、燃えてる階と場所を下から確認し、ベランダの反対側にあるマンションの階段を上がりました。
近くに消火器もあったので、それ担いで燃えてる部屋の玄関のドアノブを握りしめました。

その瞬間。

頭に浮かんできたのは「人が燃えてたら・・・」とか「バックドラフト起きたら・・・」とか怖いイメージばかり。
怖くてドアが開けられない。

情けないことに、そのまま消火器を元に戻して、また下に戻りました。
いや、ホントに怖いって思いました。膝の振るえもハンパじゃない。
消火器1本でどうにもならない、とか素人では危険すぎる、とか自分に言い訳しまくってね(事実ではあるけど、カッコ悪い)。
そうこうしてると通報してから20分ぐらいかな。
消防隊到着。消火活動始まりました。

一件落着

鎮火も20分ぐらいかな。結構早く消えてくれて助かった。気づいたら年明けてました。
消防の人に通報したときの状況を再度説明して、会社にも報告して、火の粉も飛んでこなかったので一件落着。

まぁ、ホント、ビックリしましたよ。
意外と最初わかんないもんなんですね。
「何であんなとこが燃えてるんだろう?」って考えるだけで、火事って気づくのに3秒くらい停止してましたもん。。

想像したこともないし、想像外の事柄起きるとパニックではないけれど、それとわかるまで時間かかる、というのを改めて実感しながら1996年の正月を迎えました(まさかその2年後に消防関連の仕事に就くとは思いもよらなかったけど)。

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