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4.産業医の役割誤解の落とし穴

前回の記事では、健診判定の就業区分が「通常勤務」、「就業制限」、「要休業」という3つに分けられているということを説明しました。ここに潜む落とし穴が、産業医は就業を制限する立場であると捉えてしまうというものです。たしかに産業医は就業上の措置に関わる意見として、時間外労働(残業)や、夜勤・交代制勤務の禁止や制限を事業者に出すことがあります。しかし、産業医は労働者が安全に・健康に働けるように支援するのが役割です。そのための就業上の措置に関わる意見は「労働者の就業を制限する事項」ではなく「労働者が安全・健康に働けるために必要な事項」ということになります。前者と後者では、大きく意味合いが変わってきますので、くれぐれも注意してください。

産業医として健康になんらかの問題を持つ労働者に対応するときに、健康のために何を制限すればいいのだろう?という視点で臨むのではありません。どういう点に配慮すれば安全に健康に働き続けられるのだろう?という視点で臨む必要があります。実際の対応としては、メンタルヘルス不調の方の復職のケースや、がんの治療を受けながら就労を継続するケースがあり、ときに判断に悩むような難しいケースもあります。その場合に、どっちの視点を持つかで全然話変わってきます。

産業医に相談すると、あれもダメ、これもダメと働き方を色々と制限されるものだと労働者側に捉えられてしまっては困ります。その結果として、必要な情報や相談が産業医にあがってこないという事態に繋がってしまうこともあるからです。就業上の措置の内容を労働者に伝える際には、健康に働き続けるために必要であることを丁寧に説明していく姿勢が望まれます。また、産業医だけでは、どのような措置や配慮が望ましいか決められないことも多々あります。その場合は、その労働者だけではなく、職場の上司、人事担当者、安全担当者などともコミュニケーションを図っていくことが重要です。

産業医は医学の専門家の立場で「どうやったら労働者が健康に働き続けられるのか」を考え、労働者を支援する存在です。就業を制限する存在と捉えないようにご注意ください。

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