ガチ産業医3

8.就業制限かけっぱなしという落とし穴

健康状態は常に一定ではなく、経過観察中や治療中においても変化することがあります。また、就労状態もまた一定ではなく変わることがあります。例えば、上司が変わる、繁忙期や人が足りないなどの事情で業務内容が変わる、配置転換によって異動してしまっている場合などがあります。就業上の措置が出されたのに、上司が変わって引き継ぎがなされず、いつのまにか負荷の高い業務に就いてしまうこともあります。その結果として、業務によって病態が著しく悪化してしまったり、重大な労災が起きてしまう事態は避けなければなりません。また、特に類型3※を意図して就業制限をかけた場合には、適切な受療行動や生活習慣改善にきちんとつながっているかフォローすることが適切です。就業上の措置(就業制限)のかけっぱなしにならないように、一定の期間ごとに就業上の措置(就業制限)が妥当であるか見直す必要があります。
(※就業上の措置類型はこちらの記事参照

本来は事業者の責務として産業医に意見を問い合わせるという構図にはなっていますが、実際にはこちらからの働きかけが必要になってくることが多いように思われます。かけっぱなしにならないためには、産業医の意見を記す書類のフォーマットに措置期間を設けることや、見直し期間を定めるなどの仕組みに落とし込むことをおススメいたします。産業医自身も常にフォローアップをどうするかを意識し、それを事業者や労働者に伝える必要があります。

こちらは厚生労働省の「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」に掲載されている就業上の措置に係る意見書です。措置期間の欄が設けられています。

就業上の措置に関する意見書

なお、産業医自身も交代する際には、就業上の措置に関する意見を述べた労働者に関する情報はご引継ぎください。



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