SAYONARA Wild Heartsに見るエモさと滑稽さの境界線



どうもこんにちは。9052です。

今回はSAYONARA Wild Heartsというゲームをサッとクリアしてきましたので、感想と簡単な考察をば。


■ どういうゲーム?
■ このゲーム、ブッ飛んでやがる…!
■ 言いえて妙なり、このジャンル
■ やりこみは滑稽ではない

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■ どういうゲーム?

SAYONARA Wild Hearts(さよならワイルドハーツ)。

ゲームのPVやスクリーンショットを見ても、正直どういうゲームなのかは見えてこないと思います。ですが画面の色合いからしてもうエモカッコよさ抜群なのでジャケ買い必至な作品でございます。


https://store.steampowered.com/app/1122720/


このゲームは「ポップアルバムビデオゲーム」というジャンル(なんだそりゃ!?)で、いわゆる「ランゲー」となっております。

ランゲ―といえばスマホで一時期爆発的に流行していたゲームジャンルで、一定速度で走り続ける自機に対して、ジャンプやスライディング操作を駆使してオブジェクトを集めたり または障害を避けたりしながら完走する といったゲームです。余談ですが、スマホでランゲーが流行ったのは、「複雑な操作がいらずに」「お手軽な爽快感が得られる」からだと認識しております。

スマホだったら一般的には横スクロールですが、このゲームは基本的には奥スクロールで、左右に動いたりタイミングを合わせてボタンを押したりします。基本的には。

ポップな見た目をしながら作風はかなりチャレンジングで、奥スクロール、手前スクロール、一人称視点、様々なギミックと目まぐるしく入れ替わっていきます。

ただのランゲ―であれば見た目の気持ちよさだけで終わるのですが、このゲームのもう一つの特長はとてもノリの良いエレクトロポップな楽曲の数々。そこにネオンカラーで彩られた世界が超融合を果たし、プレイ体験が既にもう気持ちよいものとなっております。ネオンカラーの街並みを超高速で駆け抜けろ!

■このゲーム、ブッ飛んでやがる…!

さてこのゲーム、見た目のエモさよりも群を抜いてチャレンジング(あるいは独創的)なのがストーリーテリングとその表現方法です。

メニュー選択とオープニング、エピローグにはテキスト文が出てきますが、それ以外は基本的にテキスト表記によるストーリーテリングはされません。なので映像を見ながらストーリーを追う事になるのですが、見れば見るほど「?????????」となってきます。

序盤で主人公の女性がいきなり変身したり、どこからともなくバイクを出したり、さらには意味不明なライバルがいたり、バイクに乗りながら戦ったり、挙句ライバルのハードをパンチでぶち割ったりと、もはや情報量のわんこそば状態です。

特にゲームカセットにされて敵プレイヤーのVR機の中で暴れまわる(しかも自機は主人公の顔)という描写は、マジで何かキメてないと出てこないアイデアだろうと爆笑しておりました(褒めてます)

プレイヤーに寄り添う気もないどころか、遥か1万光年先まで置き去りにしていきやがる。

ブッ飛んでやがる…!

タロットカードや星座を題材にしているのでその知識がないとオープニングとエンディングの意味も理解することは難しいのですが、実はsteamやnintendo switch、PS4のストアページ説明に書かれている説明文を読むことで全て合点がいきます。

夢のような世界を舞台にしたアーケードゲーム『さよならワイルドハーツ』―この世界では、バイク、スケートボード、ダンスバトル、レザー射撃、殺陣、そして失恋…すべてが時速200マイルのスピードで展開される。

恋に破れ傷付いた少女の心がバラバラに砕けた瞬間、世界のバランスが崩壊する…。夢の中に現れたダイヤモンドの蝶が、少女を空のハイウェイへと誘う…そして少女はこの場所で、自分には覆面ライダー「ザ・フール」という別の顔があることを知る。

本作のために書き下ろされたオリジナルのポップなサウンドトラックをBGMに、ハイスコアを狙おう。世界の調和を取り戻すことを目指しながら、「リトル・デス」や星の運に見放された仲間ダンシング・デビル、ハウリング・ムーン、ステレオ・ラバーズ、ハーミット64のハートを見つけ出そう。

ポップなサウンドに合わせプレイを楽しもう!

※ steam ストアページの説明より抜粋
まさか失恋で世界の均衡崩れると思わねえよ。気持ちはわからんでもないが。

でもこの説明文を前提にしてゲームを始めると、集めるオブジェクトが全てハートであったり なんだかんだ戦っても最終的に全員を愛で救う描写があったりと一貫していたりするのです。あれもラブ、これもラブ。

■言いえて妙なり、このジャンル

さて、ゲームを見た事ある人もそうでない人も、このゲームがいかにキマっているのかがご理解いただけたかと思います。

リズムゲーム、ランゲームにしてはいささか設定やストーリーテリングがブッ飛びすぎて、意味を追う事を忘れて笑えてしまう、もはや滑稽なものに仕上がっているのです。一緒に見ていた方が「君のためなら死ねる」みたいなバカゲーだ と言ったのも頷けます。

でもちょっと待っていただきたい。

公式では、このゲームのジャンルはリズムゲームでもランゲームでもありません。これは「ポップアルバムビデオゲーム」というジャンルのゲームです。要するにポップな曲をアルバムに仕立て上げ、それをゲーム化したもの。

つまりは遊べるミュージックビデオです。
こう考えると構図に納得がいきます。

ミュージックビデオは抽象性が増すほど人を選ぶような、意味をくみ取る必要のあるものになったりします。
それは「考察するという文化圏」の外からすれば、いささか滑稽なものです。だって何やってるかわかんないんだもの。
ところが解釈や考察が一通り済むと、それはもうただの滑稽なビデオではない、特別な意味を持ったエモエモな作品へと昇華されるわけです。「そうか!このシーンにはこんな意味が!」というアレですね。

その考察の手がかりとなるものは映像内にあるものだけではなく、他の知識を使ったりするものもよくあります。
例えば歌詞カードによる解説、
例えば専門誌の特集ページ、
あるいはコメント欄の集合知、
もしかしたら商品のストアページにひっそりと書かれていることもあるかもしれません。

そんなわけで、絵面はネオンカラー、気持ちの良いエレクトロポップミュージックに対して、疑似的に抽象画を見せられているという雰囲気に近かったのかもしれません。

深読み乙と言われるかもしれませんが、
意味のない物にまで考察をするのもいささか滑稽だよ という事でここはひとつ。

■やりこみは滑稽ではない

実はこのゲーム、ストーリーモードはよっぽどでない限り、1時間もあれば終わります。(最初から最後までノンストップで駆け抜けるモードがあるくらいです)
なーんだ、1時間しか満足できないの?と思ったあなたに朗報。ステージごとの得点でランク(ブロンズ、シルバー、ゴールド)が存在し、ゴールドランクを取っていくのはかなり至難の業。何度も練習して ゴールドランクを目指しましょう。
また、ここで輪をかけて厄介なのが「星座の謎」というモード。
12星座表裏 24個の意味深な文章が掲げられています。こちらは要するに実績要素なのですが、これがまぁ難しい難しい。
技術的に難しい物もあるのですが、「ノーミスでクリアする」みたいな描かれ方はしていないのです。

例えば
「この星空で私が表彰台に立てる余地はなかった」
みたいな感じで、かなり抽象的かつ詩的に記載されているのです。
(この場合は、星空がメインとなっているステージで、ブロンズランクより下の得点でクリア となります)
ゲームの技術が上手ければ…なんてことはなく、今確認した中でも「タロット知識」「ローカライズを再度英語に戻して考える」「楽曲名から推察」
などのように、メタ的な知識を用いて謎を解き明かすという操作が必要になっています。
(全ての謎を解き明かしたわけではないですが、「それは思い浮かばねえよ」というものもいくつか。)

なんやかんや言ったものの、基本的に操作は上下左右と○×しか使わず、シンプルに遊べます。複雑な操作をもって「面白い!」と思うタイプのゲーマーの方は少し退屈に感じるかもしれませんが、それを覆すほどの疾走感はあります。これは間違いない。

やりこみや謎解きをやるかどうかは人それぞれですが、
絵面のエモさ、エレクトロポップでキュートな曲の数々、そしてどこまでも滑稽に見えてしまう「遊べるMV」なゲーム「SAYONARA Wild Hearts」でした。

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