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手が動くときは動くままに。言葉はいつも後からついてくる

トップ写真は我が家でとれたゼンマイ。庭にゼンマイがあることに昨年気づいた。今年も出てきてくれてうれしい。

7カ月に渡る旅を終えて、ついに帰国した。
2月の神山町は寒さがまだまだ厳しく、その一方で杉たちが我先にと花粉を撒き散らしはじめる、辛い季節がダブルブッキングするタイミング。
キッチンのオリーブオイルが固まるほど家の中は寒いし、油断してたらあっという間に鼻が詰まって眠れない日が続く。帰国のタイミング間違えたかも...と若干の後悔をした。

けれども、年度末は別れの季節。ちびっこからおじいさんまで年齢関係なくみんなで楽しむ手づくりの卒業ライブや、卒業生2人に対してたっくさんの人たちが集った卒寮式など、この時期ならではの心揺さぶられる場に居合わせることができて、離れていく人たちにおつかれやおめでとうを直接言うことができて、やっぱり帰ってきてよかった、と思った。

帰国した我々を待っていたのは、そんなハートフルな時間と、カビだらけの家の復旧作業という現実。
家の中がカビるということに、このまちに来たての頃はずいぶんとカルチャーショックを受けた。もう慣れちゃったけど。
スーツケースを開いてホッと一息ついたあとは、カビた鞄や靴を洗ったり、キッチン用品を全洗いしたりと大掃除にいそしんだ。
手を動かしだすと止まらなくなり、雨どいに積もった落ち葉を落としたり、サンルームとキエーロの波板の汚れを落としたりと、連日セルフWWOOFしている。

勝手に育った大葉たちが大量にタネをつけていた
ちょっとオシャレ感すらある


スーツケース1つに入るだけの服で夏も冬も過ごせることが分かって、断捨離も進む進む。数着を洗い回して着るのがすっかり習慣になっていたら、町内でよく会う友人に「いっつも同じ服着てるね?」と言われてしまった。だってこれでローテーション十分なんだもん!


旅という非日常が終わり、日常がはじまる

これからの暮らしをどうするか。そして同時にどんな仕事をしていくか。
考えるべきことはたくさんあるけれど、考えてもなかなか答えが出ない。そっちの方面に頭は動かないのだけど、手が勝手に動いたことはある。
帰国して早3ヶ月。この間に取り組んでいたことを振り返ってみる。

庭の開拓

畑の、特に土づくりの部分は、これまでもっぱら元農家の夫に任せていたのだけど、「黒マルチを極力使わず」「耕運機を使わず」「年中なにかしら収穫できる」畑にしたくて、夫には口を出さないようにしてもらって自分でいろいろ調べながら試してみている。
品質も収量も問われない自家菜園くらいは、身近に手に入る自然素材だけで食べ物をつくれるようになっておきたいと思うから。
夏作に向けてせっせと種やら苗やら植えていたら、気づけばハーブ類も合わせると30品種以上になっていた。同じ種類がいっぱいあっても食べ飽きちゃうから、少量多品目で。
春菊を水につけてたら発根したので植え付けてみたり、育苗トレーでは枯れてしまったパクチーがテキトーに余ったタネを撒いたところでは元気に育っていたり。いろいろ実験中。

下段のエリアにもようやく着手


堆肥場づくり

3年ほど前に切り倒した木の枝がそのまま残っていたので、バイオネストもつくった。ここに雑草をためていくと、ゆくゆくは堆肥になるという代物。
枝を組み合わせて、ツタを巻き付けて…結構あっという間にできた。何これ、めっちゃかわいい。不思議なもので、ぽっかり空いた穴ができると、ここに投入せねばという気持ちが芽生えてしまう。せっせと枝を小さく切って入れたり、雑草を運んだりしていると、空間に秩序が生まれていく。

エデン感ある


土中環境の改善

フランスで見たエコビレッジのように、果樹を植えたい!
そう思って、敷地内だけどこれまで放ったらかしだったところにも足を踏み入れ、カヤを根っこごと掘り起こす日々。
この時、柚香の老木がかなり弱っていることに気づく。なんだか地表も固い気がする。それがきっかけだったか忘れたけど、土中環境が気になりはじめた。土中環境の本は持っていたけど、より実践編の本が出ていたので即購入。
長い間(我々が住むずっと前から)手入れがされていなかったエリアは、ツタが他の木々に巻きつき、地表付近に根を張りめぐらせている。本によるとこれはどうやら好ましくない土中環境なのだと分かり、改善のためにせっせと「点穴」なるものを掘って落ち葉と枝を投入していった。「ドサ置き」と呼ばれる手法も試した。

大量のカヤ。茂りすぎた竹林も整備中


石積み修復

畑エリアを開拓するために、崩れていた石積みも直した。石積み経験のある友人たちに助っ人に来てもらったら、2日間で修復できた。みんなでやると楽しい。
石積み修復をする時、積み石とぐり石不足に陥ることがよくあるのだけど、神山町内では薪ステーションならぬ石ステーションを設け、石が必要なところに循環していくことを目指す、かゆいところに手が届く素晴らしいサービスが町内の宿の敷地内で試行されている。このスゴさ、わかる人にしかわからないのが残念。
みんなで取り組んだ石積み修復の後日、狭くて低い範囲で崩れている2箇所は自分でサクッと直した。自主練的な。
石積みは楽しいのだけど、開拓すればするほど、崩れている箇所が顕になってきて追いつかない。また冬にがんばるかなー。


狩猟への一歩

帰ってきてから感じたこのまちの変化は、風車と防獣ネットが増えていたこと。私の住むエリアにもずいぶんと鹿が増えたと聞いた。幸い我が家の畑が被害を受けたことはないけれど、森エリアを開墾していると鹿のフンはいたる所で目にしたので時間の問題なんだろう。
今年こそ狩猟免許をとろうと思う。銃を使いたい欲求は今のところないので、罠の免許だけ。
知り合いの作家さんが鹿をしょっちゅう捌いているのを以前からSNSを通じて見ていて気になっていたので、滋賀までお話を聞きに行った。害獣駆除と狩猟の違いという初歩から教えてもらい、狩猟から解体までのプロセスとそこに関わる人の考え方など解像度がグンと上がった。


ゲストを受け入れる環境を整える

今回の旅でいろんな人たちに受け入れてもらったように、今度は私たちも人を招けるような空間にしていきたい。ここまで書いた諸々の作業は、そのため屋外環境の整備でもある。
屋内はというと、使っていない半個室のベッドルームがあるので、荷物をどけたり掃除して、目隠しの布を張ったらいい感じになった。
宿にできたらと思うけど、キッチン含め水回りは共有だし、あくまで自宅の延長なので行き届かないところもある。初対面の人が頻繁に出入りするのも疲れそう。一緒に晩ごはん食べて楽しんで、お酒飲んでそのまま寝てもらうくらいがいい。
あるいは、このまちは夜営業の店が少ないので、晩ごはんを食べる場所として開くのもいいかもしれない。
無理ない範囲で友人の友人限定くらいでやっていこうかな。

夜景を見ながら火を囲む



3月と4月前半、予定のない日はずっとこんな感じで、せっせと手を動かしていた。
朝起きて作業内容決めて、午前中しっかり働いて、お昼をゆっくり食べて、午後は作業を続ける日もあれば出かけたり別の用事を済ませたりする日もある。WWOOFでそうした動き方が身体に馴染んでいて、そのルーティンが心地いい。
が、ノコや高枝バサミを握りしめて毎日作業してたら手を痛めてしまい、しばらくの休養を余儀なくされてしまった。

でも、まちの人たちに「最近どんな感じなの?」と聞かれて「畑やってるよ!」と答えると、「ふーん?」みたいな反応が帰ってきて、ちょっとシュンとなる。まぁみんなはフルタイムで働いて週末に農作業してるからね…。

今自分の心が動いていて熱中しているこのアクションは、世界を巡って感じたいろんなことの帰結でもある。
そこを伝えられる言葉を持ち合わせていなくて歯がゆい。言葉はいつも後からついてくる。


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