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3月の花の俳句(季節を味わう#0051)

「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。


【菜の花】

日本では古くから油菜が栽培されていましたが、現在ではほとんどが西洋油菜です。秋に種を蒔くと、翌年の春に芽を出して黄色い十字の形をした花をつけます。一面の菜の花は元気な黄色でありながら、どこか郷愁を誘います。

菜の花や月は東に日は西に  与謝蕪村

この句は、安永3年(1774年)の句です。
与謝蕪村が、現在の神戸市灘区にある六甲山地の摩耶山(まやさん)を訪れたときの句だそうです。
摩耶山から海に向かって見下ろすと、東は左手。左側から月が登ってくるのが見え、右を見ると西の方角に太陽が沈んでいくのが見えるということ。
正面に花の花。あたりが夕映に輝いた後、徐々に暗くなっていく中、正面の黄色い菜の花畑を挟んで月と太陽が見えるという大きく美しい景色です。
摩耶山天上寺にはこの句の句碑がありますが、もう1箇所、意外と身近な場所にこの句の句碑が立っているのをご存知でしょうか。
大阪市中央区茶屋町にある梅田芸術劇場の正面の植え込みに円錐形の句碑の後ろに日輪なのか月輪なのか、丸いモニュメントが添えられています。
お近くに行かれた際にご覧になってくださいね。

菜の花のどこに立ちても真正面   たむら葉

随分前に、生花の腕前を華道家の假屋崎省吾さんが判定するというテレビ番組がありました。その際、お花は正面、表面がこちらに向いているかが判定基準の一つになっていました。
確かに向日葵やガーベラなどははっきりと表と裏の差がわかります。裏側から見た時はそれほど綺麗に見えないかもしれません。しかし、菜の花はどこから見ても全てが同じように見えます。どこに立って見ても全て真正面だというこの句にハッとさせられました。菜の花を見ていると、なぜか元気になれるのはそのおかげかもしれませんね。

(2024年 3月27日)


「季節を味わう」は大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムの毎週水曜日午前11:30と午後8:40から放送しています。
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