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9月の花の俳句(季節を味わう#0025)

「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。

【菊】

撮影:NhatBanさま

菊の香や奈良には古き仏たち      松尾芭蕉

松尾芭蕉がこの句を読んだのは、元禄7年9月9日、旧暦での重陽の節句の日だったそうです。重陽の節句は菊の花を飾ったり、菊の花びらを浮かべたお酒を楽しんだりして長寿や無病息災を祈願する日。
「菊が香る季節、古都奈良には多くの仏像がおわします」というこの句。菊の花の上品なイメージと、奈良の仏様たちの奥ゆかしい様子が思い浮かびます。
松尾芭蕉はこの句を読んで1ヶ月ほどで亡くなりました。もしかしたらすでに自分の死を予感していたのかもしれません。奈良にある仏像たちの前には一人の人間の寿命などは短いものに感じられます。仏像の永遠性と、人間の限りある命の対比まで感じさせられる句だと思います。

余談ですが、私は4月の花の句として、松尾芭蕉の「七重八重七堂伽藍八重桜」をご紹介しています。これも奈良の句です。松尾芭蕉は奈良を愛していたのかもしれませんね。もしよろしければお読みください。↓

【コスモス】

撮影:へいなん様

燈台のコスモス海になだれおつ     石原八束

コスモスの原産地はメキシコ。キク科の一年草です。
風雨で倒れてもまた起き上がり花を咲かせ、晩秋まで咲き続けるコスモスは、見た目はたおやかですが、強い植物と言えるでしょう。日本に渡来したのは明治時代ということで、日本では歴史が浅い花ですが、日本人の好みに合ったのか、たちまち栽培が広がりました。「秋桜」という字を当てたことも人気に繋がったのかもしれません。
この句では「海になだれおつ」と表現しており、海の際までコスモスが大量に咲いている様子が目に浮かびます。強い海風に揺れながらも、決して倒れることなく花を咲かせているコスモスにしなやかな強さ、生命力を感じます。

(2023年9月27日)


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