見出し画像

11月の花の俳句(季節を味わう#0033)

「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。

【山茶花】

写真:くららmiさま

山茶花やいくさに敗れたる国の  日野草城

山茶花はツバキ科の常緑樹。日本特産種で、四国・九州・沖縄に自生種があり、十月から十二月に枝先に白い一重の花を咲かせます。園芸種には、鮮やかな赤や桃色、絞りのものや八重咲もあります。椿と似ていますが、椿にように花が落ちるのではなく、花弁が散ります。

この句を読んだ日野草城さんは1901年(明治34年)に東京で生まれました。京都帝国大学を卒業後、大阪府豊中市の会社に入社しています。
この句は1945年(昭和20年)11月11日、豊中市で開かれた俳句会で発表されました。終戦後約3ヶ月で句会が開かれたということになります。
豊中市はこの年の6月から7月にかけて6回も空襲を受けたということで、終戦後約3ヶ月では傷跡もまだ生々しい状態だったのではないでしょうか。
句会が開かれた家に続く道に薮の茂みがあり、そこから山茶花がぽっかり浮き出たように咲いていたのだそうです。
戦争の傷跡と、山茶花の花。「いくさに敗れたる国の」の言葉に多くの想いが集約されている句だと感じました。


(2023年11月22日)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?