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5月の季語「風薫る・薫風」(季節を味わう#0057)

世界で一番短い詩、俳句。
「季節を味わう」では、毎月第2水曜日に季語を一つピックアップ。
その季語が使われている俳句も紹介します。あくまでも私の好みで。

【風薫る、薫風】

五月は木々の緑が美しい季節です。
「風薫る」「薫風」は、緑の香りを運ぶ心地よい風のことを表現した季語です。もともと和歌では花や草の香りを運ぶ春風のことを意味していましたが、俳句では初夏の風の意味で使われるようになりました。

先生はふるさとの山風薫る  日野草城

日野草城は明治34年(1901年)生まれ。中学生の頃から「ホトトギス」に投稿していました。三高(現在の京都大学)に進学し、高浜虚子に学び、29歳の時に「ホトトギス」の同人になっています。
日野草城は才能に恵まれ、意欲的に俳句を創作していきますが、俳句に性的なニュアンスを持ち込んだり、フィクションを詠むようになります。
現実を客観的に写生すること、花鳥風月を詠むことをよしとしていた高浜虚子はこれに激怒。昭和11年(1936年)に日野草城は「ホトトギス」を除名されてしまいます。
「先生はふるさとの山風薫る」が詠まれたのは昭和30年(1955年)。
その時日野草城は病に伏していました。高浜虚子は彼を許し、20年間にわたる除名を解除、再び「ホトトギス」の同人に迎えた上で、見舞いに来てくれたのでした。
自分の俳句の方向性によって20年もの間、疎遠になっていた先生ではあるけれど、日野草城はふるさとの山を思うように、遠くにいながらもずっと高浜虚子を慕い続けていたのでしょう。先生のお見舞いをとても喜んだそうです。
そしてその1年後の昭和31年(1956年)、日野草城は亡くなっています。

薫風に草のさざなみ草千里   山口速

草千里は熊本県阿蘇市の観光スポットです。
私は中学校の修学旅行で一度だけ行ったことがあります。
標高約1,100m、阿蘇中岳を望み、どこまでも続く草原には放牧された馬が歩いており、この季節には緑がひときわ鮮やか。
五月の風に草千里ヶ浜の草がなびく様はキラキラと輝いていることでしょう。雄大な自然を感じます。

(2024年5月8日)


「季節を味わう」は大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムの毎週水曜日午前11:30と午後8:40から放送しています。
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