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夏の季語「雨蛙」(季節を味わう#0010)

世界で一番短い詩、俳句。
「季節を味わう」では、毎月第2水曜日に季語を一つピックアップ。
その季語が使われている俳句も紹介します。あくまでも私の好みで。

【雨蛙】

6月(夏)の季語です。
雨蛙は体長4㎝くらい。夕立や雨の前に鳴くことから「雨蛙」と呼ばれるようになったという説があります。
木の葉や草の上に住んでいて、普段は緑色ですが、木の幹や地上では灰褐色になるなど、環境に合わせて色を変えます。


青蛙おのれもペンキぬりたてか   芥川龍之介

雨蛙のぬっぺりと濡れたように鮮やかな緑を、塗りたてのペンキに見立てるとは、芥川龍之介の観察眼、表現力、言葉選びが素晴らしすぎます。五七五、限りある文字数でもこれだけのセンスを発揮するのですから、やっぱり芥川龍之介は言葉の天才ですね。

生きるため まだらとなりし雨蛙  池田摂陽

摂陽とは私の祖父の俳号です。祖父は市井の俳人にすぎませんが、ここで紹介させてください。
季語の説明にも書いたように、雨蛙は木の幹や地上にいる時は色を変えることがあります。それは生き残り戦略の一つ。
祖父はすでに亡くなっており、今となってはこの句の真意を問うことはできません。
私はこの句を「雨蛙が生き残るために色を変えるように、人間も生きるためには変わって良い(変節しても良い)のだよ」という意味だと解釈しています。
この句には小さな生き物への温かな視線を感じ、私の動物好きのルーツは祖父なのかな、と思っています。
手前味噌で失礼しました。

(2023年6月14日)


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