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7月の季語「金魚」(季節を味わう#0066)

世界で一番短い詩、俳句。
「季節を味わう」では、毎月第2水曜日に季語を一つピックアップ。
その季語が使われている俳句も紹介します。あくまでも私の好みで。

【金魚】

金魚は鮒を観賞用に改良したもので、室町時代末期に中国から伝えられたといわれています。その後、日本で品種改良が重ねられ、出目金、琉金、蘭鋳など様々な品種が作られました。
ちなみに日本金魚の三大産地の一つに挙げられるのが奈良県の大和郡山。大和郡山の金魚は第5代将軍 徳川綱吉に仕えた柳沢吉保の子 吉里が甲斐の国から郡山藩主として国替りしてきた時に持ってきたと伝えられています 。下級武士の内職だった金魚の養殖が、徳川時代の末期から明治の初期にかけて付近の農家に伝えられました。水が良かったこともあり、日本の主要産地となったそうです。大和郡山市には金魚ストリートもあるのだとか。
三代産地のあと二つは、愛知県の弥富、東京都の江戸川だったのですが、東京江戸川周辺は都市化宅地化の影響で、金魚の養殖所は埼玉県に移転してしまいました。最近では、東京都江戸川に代わって熊本県長洲町を入れて三大産地と呼ぶようです。

金魚の尾冷たく燃えてをりにけり   稲畑廣太郎

水の中、ゆらゆらと尾鰭を揺らす金魚を思い浮かべて、なるほど、と唸りました。ゆらめく尾びれを炎に見立てた表現「冷たく燃えてをりにけり」がすごい。おそらく、金魚すくいで見かけるような細いタイプの金魚ではなく、蘭鋳や出目金のように体も尾もゆったりと大きい金魚なのでしょう。
金魚と炎、全く異質なもののはずなのに、納得してしまいます。

(2024年7月10日)


「季節を味わう」は大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムの毎週水曜日午前11:30と午後8:40から放送しています。
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