8月の花の俳句(季節を味わう#0020)
「季節を味わう」では、毎月第4水曜日にその月の花を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。
【朝顔】
朝顔のみな空色に日向灘 川崎展宏
8月といえば夏休み。私が通っていた中学校では夏休みに朝顔の水やり当番がありました。中学校と当時の我が家は川を挟んでおり、中学校に通うには一度山を下り、もう一度山を登る必要がありました。山といっても大して高度はありませんが、毎日軽い登山をする必要があったのです。
夏休みなのに朝顔に水をあげるためだけに登校するのはなんだか損をしたような気分になり、サボりたくなる自分を叱りつつ登校した記憶があります。
夏休み=朝顔の水やりというイメージがあり、夏の季語だと思っていたら、朝顔は秋の季語なのですね。意外でした。
朝顔の句といえば、加賀千代女の「朝顔に鶴瓶とられて貰ひ水」が有名だと思いますが、私の好みで川崎展宏さんの「朝顔のみな空色に日向灘」を選びました。
みな、というからには朝顔は一つや二つではなくたくさん咲いているのでしょう。一面に咲いている朝顔に相対するのは宮崎県の日向灘。朝顔の空色と海の青。大きな景色が見えます。
【露草】
ことごとくつゆくさ咲きて狐雨 飯田蛇笏
私は生まれてから今日まで、いろいろな花を見てきました。その中で、初めて見た日のことをはっきりと覚えているのが露草です。
それは小学校1年生の時。我が家は私の小学校入学を機に引越したので、引越ししてまだ半年経っていない頃だったのだと思います。まだ友達もたくさんいるわけではなかったし、知らない場所も多く、私はよく一人で家の近所を探索していました。昭和40年代、空き地や竹藪があちこちにあった時代です。
ある日、空き地の草むらに青く美しい花が咲いているのを見つけました。青くて丸みのある花びらが2枚、黄色いかわいいめしべと、白くて長いおしべのコントラストが鮮やかで、私は探索を忘れ、しばらく花に見惚れていました。それ以前に住んでいたところで見たことがあるのは花壇に植えられたチューリップやケイトウなどで、私にとって花は赤や黄色、白色しかなかったのです。こんなに鮮やかな青色の花があろうとは。顔を近づけてまじまじとみていた自分の姿まで覚えているほど、印象深い出会いでした。今でも露草を見かけると初めて見た日の感動を思い出せます。
上で紹介した「朝顔のみな空色に日向灘」の視点は比較的高い位置にあります。それに対して、「ことごとくつゆくさ咲きて狐雨」の視点は下に向いています。露草は成長しても50cm程度。大人であれば見下ろす格好になります。「ことごとく」ですから、露草は群生しているのでしょう。さっと降った狐雨に濡れて、鮮やかさを増した花の青色と葉の緑が美しい句です。
(2023年8月23日)
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