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引き算ビジネスは「ナイことで別の価値」「徹底したユーザー目線」にあり!【経営戦略のプロが実践的解説】

常識的にはあるだろう機能を"引いた”ことで、売上げを伸ばした製品やサービスが身の周りには少なくありません。

そんな儲かりの「引き算ビジネス」について、8月16日放送の番組『儲かる!引き算ビジネス』では製品の例を紹介します。今日は、そんな番組放送前の予習です。

引き算ビジネスには2つのパターンに大別できる」と解説してくれたのは、ビジネススクール「グロービス経営大学院」の教員として、マーケティング、経営戦略、管理会計などの分野で教鞭をとる嶋田毅先生です。

10分カットの理髪チェーンもGoogleの検索画面やiPhoneのデザインも、広告ナシで動画見放題の「YouTube Premium」もあのシェアリングサービスも、引き算ビジネスで説明できるんです! 

嶋田 毅(しまだ・つよし)
東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計160万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。また、グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、ビジネスプラン、管理会計、自社課題などの講師を務める。著書に、『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『MBA心理戦術101』 などがある。
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世の中には、「本来ついている機能がない」ことで話題になる商品やサービスが多々あります。

たとえば、アイリスオーヤマの「ドラム式洗濯機 HD71」。ドラム式ですから当然乾燥機能がついていると思いきや、この洗濯機にはついていません。代わりに洗濯の際の温度が調整できて部屋干ししやすいなど、別の機能を追加することで乾燥機能のないことを補っています。

加えて、「電気代の節約になる」「うるさくない」といった便益をユーザーに提供することで一定の人気を誇っています。

今回は、こうした「引き算型」の商品やサービスについて、大きく2つのパターンを見ていきます。

パターン1:ナイことが別の価値を生み出す

1つめは、「あるべきもの」を省いたことで、かえって別のメリットが提供されるというケースです。

最もわかりやすい例は、古くはソニーの「ウォークマン」でしょう。当時のオーディオ機器は「聴くだけ」ではなく「録音できる」ことがある意味当たり前だったのですが、ソニーはその機能を省く製品を開発しました。

その代わりに「軽量で外にも持ち運びやすい」という別の価値を提供できたことで、大ヒット製品となったのです。

理髪店で常識のサービスをやめたQBハウス

スクリーンショット (629)

10分カットで有名な理髪店QBハウスもこのケースの例でしょう。QBハウスの特徴は、髪のカットのみに特化し、髭剃り(顔剃り)や洗髪、コロンをかけるといった通常の理髪店では当たり前のサービスを提供しないことです。

その結果、通常は小一時間程度かかる理髪がおよそ10分へと大幅に短縮されました。価格も通常は3000円から4000円程度のところが1000円(当時の価格。現在は1200円)と劇的に安くなりました。

お客さんにとっては、スピードに加え、大幅な値下げ、さらには話すのが苦手な人にとっては、カットする人と話をしなくてもいいという別の便益を得ることになったのです。

筆者自身、理髪店について若いころから「髭剃りや洗髪はなくてもいいんじゃないの」と思っていました。理髪店でそれをやってもらったところで、結局家に帰ればまた風呂に入って洗髪しますし、当然コロンやアフターシェーブローションも流れてしまいます。

ひげも1日たてば自分で剃らなければなりません。理髪店の本質は効果が1カ月程度続く髪のカットであり、1日で効果が消えてしまう髭剃りや洗髪はムダだと思っていたのです。QBハウスが登場した時は「これだ!」と思いました。ここ20年以上QBハウスを愛用しています。

Googleの検索画面や、iPhoneのデザインも

スキマビジネスについて解説した「微糖コーヒーに潜む「儲かるスキマ」とは? 経営戦略のプロが解説、ビジネスで使える『〇〇以上〇〇未満』作戦!」でも紹介したブルー・オーシャン戦略では、「思い切ってなくす」ことを差別化の方法論の1つとしており、そこでもQBハウスの例が取り上げられています。

あとから「なるほど!」とひざを打つアイデアにいち早く取り組み、規模化して業界ポジションを築いたという意味でも、特筆すべき事例といえるでしょう。

冒頭のアイリスオーヤマの「ドラム式洗濯機 HD71」も、考えてみれば乾燥させる方法はほかにもあるわけです。晴れている日は天日干ししたいという人も多々います。

であれば、思い切って乾燥機能をなくし、その代わりに乾燥時の騒音をなくす、電気代の節約につなげるという便益を提供したのも、十分にあり得る差別化の方法といえるのです(部屋干しについてケアしている点も良い着眼でしょう)。

ややゴミゴミしたYahooなどのポータルサイトの画面に比べるとあらゆる情報を差し引いて検索窓のみにしたGoogleトップページの検索画面や、携帯電話からボタンを引き算したiPhoneもそう。

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デザインをミニマムにし、それがかえって操作性の高さやわかりやすさやクールさなどの価値を生み出した好例といえます。

パターン2:多くのユーザーが抱く「要らない」を取る

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