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画文の人、太田三郎

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このマガジンで取り上げるのは、明治大正期にスケッチ画や絵物語で活躍した太田三郎という画家である。洋画家として名をなしたが、わたしが関心があるのは、スケッチ画の画集や、絵葉書、伝承…
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2022年2月の記事一覧

画文の人、太田三郎(4) 洋画について

 わたしが、太田三郎の画業の中で一番評価したいのは、スケッチ画や木版画、そして物語・詩歌と絵を組み合わせた試みである。  それらは、〈版の表現〉、すなわちさまざまな手法による印刷によって表現された〈本の絵〉であり、複製技術によるものだ。  しかし、太田の画家としての活動の幅は広い。洋画や創作版画、それに日本画も制作している。わたしは美術史に詳しいわけではないが、避けて通れないので、太田の画業について、見渡しておきたい。まず洋画から見ていこう。 『日本美術年鑑』から  いつも

画文の人、太田三郎(3) コマ絵のサイン

 申し込んだ資料がまだ届かないので、待っているうちに小さな話題を取り上げよう。コマ絵(活版印刷の紙誌面の空白を埋める本文と関わりのない絵)やスケッチ画、絵葉書には描き手のサインが入ることが多い。  今回は太田のサインの意味について考えたい。ブログ(《表現急行》)に思いつきを記したのだが、それを補足してここに掲げたい。ブログの元記事(「太田三郎のサイン」)は非表示にした。 太田の鳥マーク 太田三郎のサインは鳥の形をしていて見分けやすい。見つけると「あっ、太田の鳥マークだ」とい