![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71842230/rectangle_large_type_2_73c1d177ddc67d8443581090b0db6863.jpeg?width=800)
画文の人、太田三郎(3) コマ絵のサイン
申し込んだ資料がまだ届かないので、待っているうちに小さな話題を取り上げよう。コマ絵(活版印刷の紙誌面の空白を埋める本文と関わりのない絵)やスケッチ画、絵葉書には描き手のサインが入ることが多い。
今回は太田のサインの意味について考えたい。ブログ(《表現急行》)に思いつきを記したのだが、それを補足してここに掲げたい。ブログの元記事(「太田三郎のサイン」)は非表示にした。
太田の鳥マーク
太田三郎のサインは鳥の形をしていて見分けやすい。見つけると「あっ、太田の鳥マークだ」といつも思っていたが、サインの由来については考えたことがなかった。
まず例を見ていただこう。
『スケッチ画集 第二集』(明治43年5月23日、日本葉書会編纂、博文館・精美堂)から、《お伽噺》という絵を引用する。
コマ絵として使われたときは、題名も作者名も記されていなかったと思われる。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71837680/picture_pc_157200dc84065fa4965078dc9805cfc8.jpeg?width=800)
文字の説明はなくても、少女が『舌きり雀』の絵本を読んでいることはすぐ分かる。
読んでいる本の内容を示した右上の枠の左にサインがある。
もう一枚見てみよう。《女学生》という作品である。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71838593/picture_pc_29405d9ff44c5d44a95d55310d7c346a.jpeg?width=800)
やはり、鳥のかたちのサインがある。このサインを拡大してみよう。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71838669/picture_pc_e3f8083604cb186e1047d87d74d50c30.jpeg?width=800)
はじめの推理
ある時、この鳥マークを見ていて、「OTA」と書いてあるのではないかと気がついた。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71838290/picture_pc_459b16210cb4bab9549c7c8ac8764a52.jpg?width=800)
「S」に気づく
眺めているうちに、鳥の輪郭がS字形であることに気がつく。
「OTA S」 という意味ではないかと考えた。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71839308/picture_pc_4ef9b3cb6d667f5fd3be424262800243.jpg?width=800)
これで意味がわかったと思ったが、なんとなく足りないような気もする。
「O」に重ねられた「H」
資料が届くまでに、準備をしておこうと、『太田三郎作品集 第一輯』(昭和12年11月15日、美術工芸会)の表紙を見ると、太田の洋画のサインが拡大してある。
「Ohta S.」 とあるのだ。
![画像6](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71839561/picture_pc_b3d12c3fee1b6703df70214e6584fc29.jpeg?width=800)
そうか、「O」ではなく「Oh」と表記しているのか。
サインをもう一度見ると、あるある、「H」が「O」に隠れているではないか。
![画像7](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71839658/picture_pc_f869561223510b7734fdc3aa4ce7ea5c.jpg?width=800)
「OHTA S」 が完成した。
夢二のサイン
同じ『スケッチ画集 第二集』から竹久夢二の《少女》という作品を紹介しておこう。
![画像8](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71840277/picture_pc_f75a883196e63ca2a34955671a2de0a6.jpeg?width=800)
サインは、「夢二」の文字からデザイン化されている。
竹久夢二のようにコマ絵の世界でスターになった人、太田三郎のようにコマ絵作家として活躍し、かつ「本絵(本画)」(展覧会に出品する絵画)でも活躍した人は名が残り、サインも知られている。
しかし、投稿家から身を起こしたコマ絵作家は、サインがあっても誰かわからない場合がある。
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