[PINC-0005] メトロポリタン

　先日、Twitterにてフォローいただいているすこやかむいむいさんが、

前にCD持ってたナードコアの曲名/CD名が思い出せず再び聞くことが果たせずにいる。ビーストウォーズの次回予告をリミックスしたやつとかイニシャルDの登場人物を名乗るセリフとかをリミックスしていた奴とかが入っていた気がする 旅にグルメに　旅にグルメに　旅にグルメに温泉特集

— すこやかむいむい (@sukoyakamuimui) March 18, 2021

というツイートを発信されました。

　幸い、該当曲に心当たりがありましたので、お答えしたのですが、考えてみましたらこうした2000年前後に頒布された多くのハードコアテクノ系のアルバムやEPは、権利問題もあって、あまり内容が広く紹介されることもありません。
　またメディアもCD-Rが大多数で、いずれ消え去るおそれもあります。
　そういうわけもありまして、備忘と記録の意味もこめまして、かんたんな紹介を書かせていただきたいと思います。

　まず、すこやかむいむいさんのツイートにある「ビーストウォーズの次回予告をリミックスしたやつとかイニシャルDの登場人物を名乗るセリフとかをリミックスしていた奴とかが入っていた気がする 旅にグルメに　旅にグルメに　旅にグルメに温泉特集」についてから。
　これはPING-Music Labelというインディペンデントレーベル内にて、特にガバ・ナードコア系の曲やアルバム制作を行っていたサブレーベルPINCにて頒布された5thアルバム『メトロポリタン』に収録されていた「旅にグルメに温泉に」と「頭文字ＭＡＫＯ」という曲になります。

　PING-Music Labelは、「ﾋﾞｰｴﾑｷｭｰﾊﾁｯ！」という機械ボイスを覚えている人でしたら覚えている、「beatmania」的なゲーム「BM98」のその音楽データ（厳密にいうと違うのですが、そこはフィーリングと御理解ください）であるBMSの制作者たちが主として集まったレーベルで、M3やコミケなどでアルバムやEPを頒布されていました。
　基本はオリジナル楽曲を中心として制作を行われていたテクノ系レーベルだったのですが、時折サンプリングを多用するガバ・ナードコア系のアルバムも発表されており、『メトロポリタン』もそうしたうちの1枚となっております。

『メトロポリタン』（PINC-0005、CD-R、リリース：2001/04/30）

・トラックリスト
1. WAITING FOR YOU
2. サクラチル / cosmo
3. 花右京メイド商会(ビッグファイトご奉仕mix) / NACCXIe
4. ごった煮幕の内 / 某巫女(略)
5. 旅にグルメに温泉に / cosmo
6. 頭文字ＭＡＫＯ / DJ bathrobe
7. さよなら友枝町(b.o.s. mix) / cosmo
8. 忍者寿司阿修羅ノ章 / 某巫女(略)
9. ミスタープリンセス / ９８８８
10. HONEY NOISE / NACCXIe
11. しげるパラダイス / 某巫女(略)

　裏ジャケットはこんな感じです。
　アーティスト名の後ろの「たん (´Д`;)ﾊｧﾊｧ」は、キャラ名のうしろに「ちゃん」や「さん」のかわりに「たん」をつけて呼ぶ、いわゆるオタクスラングのひとつと、それによく付随した定型アスキーアート。
　もっとも、2001年頃では「たん」呼びは既に少々古くなっていたと記憶しています。

　以下各トラックのサンプリング等の情報を。

M-1「WAITING FOR YOU」
　デ・ジ・キャラットの挨拶か歩いている際にだしているらしい声と、おそらく「Di Gi Charat サマースペシャル」での、うさだ・でじ子・ぷち子・ゲマ・ぴよ子の気の抜けた声がサンプリングされている。オープニングかわりのスローテンポな曲。

M-2「サクラチル」（cosmo）
　堀江由衣の「桜」をかなりピッチを上げ、バスドラを効かせまくった曲に、アニメ「ラブひな」のセリフをところどころサンプリングしている、ガバ・ナードコア系の典型的なトラック。

M-3「花右京メイド商会(ビッグファイトご奉仕mix)」（NACCXIe）
　タイトル通り「花右京メイド隊」のアニメの音声と、家電店の携帯用メディア販売の告知ボイスをひとしきり流した後、最末尾の「ご奉仕中です」という声をサンプリングしている。

M-4「ごった煮幕の内」（某巫女（略））
「不思議の海のナディア」でのガーゴイルの「アトランティス人の王として私達と共に愚かな人間達を正しき道へと導くことに協力してはくれないかね？」というセリフを流した後、「クイズ$ミリオネア」でのみのもんたの「ファイナルアンサー」が何度もサンプリングされる。その後「やるじゃない」のセリフのサンプリング（アインではなく、「燃える！お兄さん」のロッキー）がくり返され、「燃える！お兄さん」のOPだった石川優子の「ドリーミー・ドリーマー」をBPM上げたものにつなげられる。

M-5「旅にグルメに温泉に」（cosmo）
「ビーストウォーズメタルス 超生命体トランスフォーマー」の番組前ジャンクション（5秒CM）の数々をひたすらサンプリングしていく。「今週のビーストウォーズは旅にグルメに温泉特集」「この次はわくわく動物ランド」「ラットルも電気ネズミなのに、どうしてあいつだけ」「今週のビーストはおいしいラーメン屋さん特集」などなど。曲名もそこから。

M-6「頭文字ＭＡＫＯ」（DJ bathrobe）
　アニメ「頭文字Ｄ」の色々なセリフの要所要所に、同登場キャラの「佐藤真子です」をサンプリングしていく。

M-7「さよなら友枝町(b.o.s. mix)」（cosmo）
　アニメ「カードキャプターさくら」のセリフをサンプリング。

M-8「忍者寿司阿修羅ノ章」（某巫女（略））
　シブがき隊の「スシ食いねェ！」のBPMを若干あげてバスドラを加え、途中に「忍者くん 阿修羅ノ章」のBGMをマッシュアップしている。

M-9「ミスタープリンセス」（9888）
　アニメ「シスター・プリンセス」のセリフをサンプリング、特に12人の妹のうち四葉の「兄チャマ」と口癖である「チェキ」が何度もくり返される。途中、亞里亞や鈴凛に入れ替わる個所がある。

M-10「HONEY NOISE」（NACCXIe）
「鋼鉄天使くるみ2式」でのセリフ「はにはにだよー」がくり返しサンプリングされる。

M-11「しげるパラダイス」（某巫女（略））
　松崎しげるの歌った「毛髪クリニックリーブ21」のCMソングとセリフをサンプリング。

　隠しトラックとして、12曲目に曲名・制作者のクレジットされていない曲が収録されていますが、こちらはサンプリングはなく、元ネタがあるのか私ではわかりません。

　聴く分では、全12曲で、サンプリングによるネタメインが7割、トラックメインが3割という感じのアルバム構成となっています。