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患者さんの気がかりを感じ取るチカラ

その日は突然の豪雨でした。

病棟の窓から外を見ると、大きな音とともに雨が絶え間なく降っています。

夜勤をしていた僕は、夜中にナースコールで呼ばれ、入院していたSさんの部屋に行きました。


「体がだるいの……」

Sさんは気圧によって体調が変わるそうで、天気がくずれると痛みやだるさがあらわれます。

つらさを和らげるため、薬を投与。そのままそばにいることにしました。

だるさは大雨の影響もあるかもしれないですね、と伝えます。

「そうか、大雨なんだね。早くあがるといいけど……」

少しでも早くだるさが楽になるようにと願う、Sさんの言葉。僕はそう受け取ります。


でもSさんの言葉は、そんな意味ではありませんでした。

「明日、孫が芋掘りを楽しみにしていてね。雨が止んでなんとかできるといいんだけど。それが心配なの」

Sさんは、自分の体のつらさではなく、孫の芋掘りを心配していました。


緩和ケアでは、体のつらさだけでなく、心配なこと、気がかりなことにも注目して関わります。

Sさんの孫に対する想いやりに気づくと同時に、僕がその想いに気づかなかった未熟さを知りました。


気がかりを感じ取るチカラ。もっと磨き続けます。



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