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「雨と、曲がり角と、予期せぬ出会い」


家路を辿るはずの僕は、何故だか未知の曲がり角を選んでしまう。本来ならば数分で自宅へ辿り着く道筋なのに、僕は未知の方角への迂回を繰り返す。

日常は、単純なものを複雑に変え、食べてはいけないものを食べ、言ってはいけないことを口にするという、何とも不条理な行為に引き寄せられる。何度自分に「ダメだ」と思っても、それがかえって僕の欲求を刺激する。

未知の曲がり角の向こう側に、雨宿りする女性が現れる。僕は持ち合わせていた傘を差し出すと、彼女は後日お礼の食事へ誘ってくれた。そして、心躍る二人はある夜、一緒のベッドで夜を過ごした。その日から僕らはお互いの家を行き来するようになり、気づけば同棲生活が始まっていた。

そのような儚い妄想は、童貞だった頃の僕へと心を引き戻す。あの時の初々しさ、それと同時に甘酸っぱさを思い出させる。

見たことも聞いたこともない事、行ってはいけない禁断の先へと足を踏み入れるとき、僕らは恐怖と不安を覚える。だがその中に、運命を変える可能性が見えてくるなら、その微細な確率に期待を寄せるのもまた事実だ。

寄り道が本当の道への再確認であるとすれば、それもまた正しい。だが、穴馬を狙わない競馬など面白みがない。それは、思いがけない結果が待っている可能性を秘めた未知の曲がり角なのだ。

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