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【井上勝正のサウナ哀・戦士】N部長、ありがとう御座いました

月刊サウナデジタル

熱波師・井上勝正が、全国各地の温浴施設で戦う“サウナ戦士”たちの哀愁に満ちた人間模様に切り込むインタビュー企画。

これは 某サウナ施設の先日退任されたN部長への感謝の気持ちです。

そのサウナ施設でボクが熱波道のロウリュを始めさせていただいたのはコロナ前、当時はその施設もロウリュヒーターではなかったことからボクの考えた『モバイルロウリュ』を用いてロウリュを発生させるオペレーションでした。

初回時はそれこそ石だ、寸胴だ、カセットコンロだとかを持ち込んで事務所でセットしている所にN部長が入って来られた、この時が初対面でした。

寸胴に石を組み込んでいるボクの姿を見てN部長は・・・


「…それでほんとにやるの?どうなってんの?」

かけている銀縁のメガネに右手を添えてかけ直し不思議そうな目でボクを見るN部長、すでに振り向いていたボクは「オファー頂いてありがとう御座います。ロウリュを行います、井上勝正と言います」と挨拶した。

N部長は
「私は此処の部長をやっとります、何か必要な物があったら何
なり言ってください。井上さんに任せるんで」

ボクは
「ロウリュを行う際にお湯を熱した石に注入したいので各回の
イベント開始時刻までに最低でも5リットルのお湯を用意して
いただきたいです」
とリクエスト。

「へ!?お湯!」と驚くN部長に熱波道のロウリュの仕組みを説明すると
「すげえな」と言ってくれてスタッフに「でかい湯沸し器あったよな、無かったらこのビルにあるポット全部持ってきて!」と直ぐに答えてくれた。

都内の駅横で立地の良いそのサウナ施設はビルの中に入っている、そこを所有する会社がサウナの運営も行っているのだ。

その日、N部長、スタッフや、お客さん、皆さんの力で行った熱波道のロウリュは非常に好評を博した。

N部長は「ありがとう、ありがとう!次回も頼みますね、みんな喜んでたねぇ!」と、「井上さん、これだけはね、ウチは駅前でやっとるんですよ。それでイベントやって、お客さんが入りませんでした、ってのは無いからね。お願いしますね」当然の事だが非常にシビアな言葉も頂いた、ボクはこの言葉を今も胸にとどめている。

それ以降も満員マークを重ねて感染症予防対策の観点から、ロウリュ休止時期はあったものの現在も熱波道のロウリュを続けさせていただいている。

ある時N部長は
「私も井上さんの熱波を受けたいんだけどねえ、そうすると髪の毛がクルクルになっちゃうんだよなぁ。私、ストレートになるようにアイパーかけてんだよね、でもサウナ入って髪を洗うとまたクルクルになっちゃうんだよ、そもそもクルクルなんだよ…。オールバックにするのにアイパーかけてんの。サウナハット被れば大丈夫かなぁ」

ボクも
「サウナハットでアイパー守れるかなぁ?調べときますよ」

N部長はボクにも頭を下げられて
「井上さん、今日もお願いしますね」

ボクは
「今日も尽力します」
と答え、うんうん、と頷いて会社の本部に戻って行かれた。

次の月もあるからサウナハットの事はそれまでに調べておこう、など思っていたらそれ以降N部長と会う事はもう無かった。情報共有のためのグループLINEも〝N部長は退出されました〟の通知。後で聞くと…

「実は倒れられて大病だと言うことが分かりました…その時点でご家族の側にいさせてあげた方が良い、とのことを医師から告げられたので故郷に帰られたんです。井上さんにはご心配かけてもいけませんし何も言われずに退任されました。…N部長はもう戻られません」

何の病気かは聞いたのですがここには記しません。
そしてN部長や勤められていたサウナ施設と話してこの文章を記していることではないので施設の名称も記しません。
今回はボクの気持ちだからです。

N部長にご馳走になった、
「井上さん、いつもありがとう!
ステーキ食べましょうよ!食ってくださいよ!
それでまた熱波お願いしますよ」

N部長、ありがとう御座いました!
今後もボクはお客さんに喜ばれるべくロウリュをやります!
どうかお体ご自愛なさってください。

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