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社会人の大学院後期博士課程の初心と今

本論はあくまで個人の今までの体験と研究に基づく私見であり、所属する(してきた)組織を代表するものではありません。

慶應義塾大学メディアデザイン研究科後期博士課程での研究

ー入学から今まで

筆者はメディア企業に勤務しつつ、2015年4月に慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)後期博士課程に入学しました。その直後の海外赴任などよる休学のため、引き続き在学中です。

その間に、自分自身の帰任後の担務が変わり入学時の研究テーマでの研究を続けることが難しくなったり、入学時の指導教員だった中村伊知哉先生が2020年4月よりiU(経営情報イノベーション専門職大学)の学長に転じられたり…などなど、いろんなことを乗り越えつつ、引き続き中村先生のゼミにも在籍させていただきつつ、この3月から砂原秀樹先生にご指導いただいています。

ここまでの紆余曲折はさておき、今後の研究を諦めずに進めるために、研究の過程での学びや気づきや参考文献などを、まとめてみることとします

ーと、note を書き始めて気づいたこと。
自分が研究したいのは、つまるところ自分のキャリアの領域である「メディア・コンテンツ」と「ファイナンス」と「コミュニティ」の今後の関係の在り方についてである、ということ。題材とする対象の如何に関わらず、一見すると関係なさそうな3つは、実は大いに関係しています。その関係について、おいおい明らかにしていきます。

入学時の研究テーマ

「生活者を起点としたコンテンツの生成・流通およびそのマネタイズの構造の解明とその応用の可能性に関する考察〜N次創作によるコンテンツの生成・流通のプラットフォームとキャッシュフロー創出の仕組み形成:A社の事業再生を事例に〜」。

ーきっかけは、勤務する会社の関係会社のM&A

入学の前年に、グループの音楽会社がボーカロイド(ボカロ)楽曲を専門に扱う音楽会社を買収し、その買収先のファイナンスに携わることになりました。それをきっかけに「コンテンツの生成・流通」のプロセスと「マネタイズ」の仕組みがあることを知りました。

名前を聞いたことはあったけど、よくわかってなかった「初音ミク」をはじめとするボカロ楽曲。
しかも「初音ミク」は緑色の髪のアニメの少女ではなく「楽曲制作ソフトの名前」だったこと。
それをもとに曲を作る人がいて、それをニコニコ動画に投稿する人がいて、さらにその曲に歌詞をつけて歌う人、歌に合わせて踊る人、歌に絵をつける人…とたくさんの人が関わってコンテンツが作られていくプロセスを知りました。

中でも(多くの人に視聴される)楽曲を作る人を「ボカロP」と呼んだり、その人に楽曲を作ってもらって、リアルな人ではなくそのアニメや映像をみんなで見たり歌ったりするイベントが行われたり…。

ー気づいたこと

この動きは、これまでのメジャーレーベルがアーティストをコンテストや路上ライブで発掘し、ライブなどの機会を設けて育成し、あるタイミングでテレビCMやテレビドラマなどとタイアップし、一気に売り出していく…といった流れとは、完全にかけ離れた世界でした。

このように生活者が生成するコンテンツをUser Generated Contents(UGC)と言います。このUGCとその後の流通のプロセスがわからないと、買収先のファイナンスは考えられないことに気づきました。

そのタイミングで実戦の中からKMDに出会い、KMDにメディアとポップカルチャーに造詣の深い中村先生がいらっしゃることがわかり、門を叩いた、という次第です。

ーと、いうことで

自分の初心を忘れぬように、2014年9月の入試時に提出し、以降、研究計画をまとめるたびに使う「職務経歴に基づく問題意識」をまとめることから始めます。

筆者の職務履歴に基づく問題意識

ー①職務経歴

 筆者は、1996年4月より約10年間に亘る金融機関での勤務を経て、2006年1月より地上波テレビ放送(以下テレビ)事業を中核とするメディア企業に在勤し、現在、同社とその持株会社(HD)で経営企画を担当している。HDは傘下にメディア・コンテンツ 事業等を有する。

 筆者は、2008年頃から各事業の成長鈍化、特に主力の地上波テレビ事業における広告収入の停滞に直面したことから、その原因と解決策を探求し日々の業務で解決したい、という問題意識が生じた

ー② WBSでの研究からKMDへの入学まで

 そのため2011年4月より2年にわたり、早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(早稲田大学ビジネスクール、以下WBS)において「業界環境の変化と法的制約下における地上波テレビ放送事業を中核とした日本のメディアグループの事業構成と組織形態の考察」に関する研究を行った

 その結果、テレビ事業を中核とし、放送法に基づく認定放送持株会社制度を利用する現状を前提とすると、コンテンツのデジタル化の進展、伝送路としてのインターネットの普及、日本の人口構成の変化等の環境変化や放送法等の改正動向等から、事業はテレビを中心としたコンテンツの制作・伝送に特化し、組織形態は制度等を活用して制作・伝送機能(特に地方局)を集約し、規模の経済の追求を図ることが望ましい、との結論に至った。
 要は、主としてテレビ向けコンテンツの制作と伝送に注力し、規模の経済の追及を図るというものである。

 2013年3月にWBSを修了後、その方向を志向しつつ業務に携わる中で、コンテンツ系事業の更なる成長鈍化に直面し、規模の経済の追及だけでは状況は改善しえないのではないか、との問題意識が新たに生じた

 その要因の一つに、映像音楽会社が2014年4月に100%子会社化したボーカロイド楽曲のレコード会社が扱うような、生活者がコンテンツを企画・制作し、伝送・販売する「User Generated Contents」(UGC)といった動きにあるのではないかと気づき、その構造を解明すべく2015年4月に慶應義塾大学メディアデザイン当研究科(KMD)への入学を志した。

そして、今

研究対象として扱う題材は、UGCからは離れます。

しかし、入学後の6年の間に、あらゆるコンテンツの生成のプロセスで、従来のようにマスメディアがコンテンツの企画・制作から伝送・販売の全てを行うことは、少なくなったと思います。言い換えると、メディア企業によるコンテンツの制作過程に視聴者が入る余地がかなり増えている、と思います。

企画立案、プロモーション、本編制作、視聴過程、見逃し対応まで、あらゆる場面で、ある意味「UGC」化が進んでいます、とも言えます(もちろん入り方=関わり方は、さまざまです)。

朝の情報番組を見れば、視聴者からTwitterで寄せられた意見が画面に出たり本編に取り上げられたり、昼の情報バラエティ番組を見れば、視聴者の興味関心に基づくランキングが紹介されたり、夜のドラマは、見ながらTwitterでハッシュタグをつけてツイートしたり…この関係をUGCというのはやや無理がある気もしますが、作り方は確実に変わっています。

ここでのポイントは、言わずもがなインターネットです。
コンテンツのデジタル化、デリバリーのインターネット化、デバイスのスマホ化…メディア・コンテンツ業界を襲う「3つの変化」は、視聴者に番組作りにご参加いただくだけでなく、その届け方やマネタイズの仕方まで変えています。そのあたりの整理も、改めて。

今のテーマは「マルチユースを前提としたコンテンツの企画制作のプロセス及びそのマネタイズの構造の解明」です。もちろん「その応用の可能性に関する考察」も行います。題材は、テレビでマルチユースと言えばドラマやバラエティ、ですがそちらには行かない予定です。

…ということで、執筆を続けるに際して考えていること、気づいたこと、参考文献などを、自分の備忘を兼ねてまとめていきます。

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