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12上の世界へ

まるで処刑台へ上がるかのような空気だった。
いや、見守る人々はそう思っていた。
自分じゃなくてよかった、と。

本人はそこまで悲壮感はなく、どちらかと言うと、このくだらない沼から抜け出せるのだ、という解放感が強かった。

行政官が宣言する。
身を賭してこの世界を守るための崇高な任務を果たせ、と。

娘は一歩階段を踏み上がる。
どよっと人々が沸き立つ。
その笑みに不気味さを覚えた。

行政官が高らかに謳う。
この者の任務遂行をより確実にするため今日より1週間食を断て、と。

人々は涙を流して頷きあっている。

バカなやつらだ。
娘はますます笑顔になる。

上にあがったら、まずはここからだ。
娘は上に何があるかを知っていた。

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